テックブログ

精神科の医療AIを作る私たちの、生成AI活用の工夫

目次
  1. AIとのやり取りは、なぜ長くなるほど重くなるのか
  2. 話を短くすると、何が消えるのか
  3. 私たちが組み直した3つの工夫
  4. 院内で使うときにも、同じことが効きます

MENTRAは、精神科・心療内科に特化した医療AIです。その開発には、私たち自身も ChatGPT や Claude といった生成AIを日常的に使っています。

使い込むほど、はっきり見えてきたことがあります。生成AIは、短いやり取りでは驚くほど賢いのに、長い作業になると急に前提を忘れるということです。同じことは、病院の中で議事録や規程の下書きに使い始めた方にも起きているはずです。

なぜそうなるのか、自社の全セッションを数えて確かめました。

AIとのやり取りは、なぜ長くなるほど重くなるのか

生成AIは会話を記憶していません。毎回、それまでのやり取りを最初から全部読み直しています。

つまり「ひとこと質問する」ときも、送っているのはその一言ではなく、そこまでの会話すべてです。話が長くなるほど、毎回の一言が重くなっていきます。

自社の開発セッション386件(合計1.3GB)を集計したところ、1回のやり取りの中身はこうなっていました。

1回のやり取りで送っているもの 量 割合
その回に新しく足した分 約 2,000 トークン 0.5%
それまでの会話の読み直し 約 395,000 トークン 99.5%

新しく足している情報は、平均でわずか 0.5%。残りはすべて「さっきまでの話をもう一度読ませている」分でした。

さらに、どれくらい話が溜まった状態で使っていたかを見ると、こうなります。

そのときの会話の溜まり具合 送信量に占める割合
30万トークンを超えた状態 83.4%
50万トークンを超えた状態 56.6%

同じ質問でも、始めたばかりのときと、長く続けた後では約12倍の差がつきます。「AIの調子が悪い日」の正体は、多くの場合これです。

話を短くすると、何が消えるのか

長くなったら要約して短くすればよい、と考えるのが自然です。実際そういう機能もあります。

ただし要約したときに何が残り、何が消えるかは決まっています。

要約したあと 対象
自動で戻る 最初に渡した前提・ルールのファイル
読み直せば戻る ファイルに書いてあるもの
消える 会話のやり取り、実行した結果、調べて分かったこと

ここが肝心なところです。ファイルにあるものは残り、会話の中にしかないものは消えます。

「さっき決めたことを忘れた」と感じるのは、その決定が会話の中にしか存在していなかったからです。要約は、決定そのものではなく決定の“気配”だけを残します。

私たちが組み直した3つの工夫

この構造が分かってから、社内での使い方を組み直しました。難しい仕組みではありません。

1. 決まったことは、その場でファイルに書く

「あとでまとめよう」にしません。目的・決めたこと・検討して却下した案とその理由・まだ決めていないこと。この4つをその都度1枚の文書に足していきます。却下した案を残すのが特に効きます。書いていないと、話を短くしたあとに同じ提案がもう一度出てきます。

2. 短くする前に、書き出す手順を決めておく

私たちは「いま何が決まっていて、次に何をするか」を1枚に書き出してから圧縮する手順を用意しました。手順が決まっていれば、覚えておく必要がなくなります。

3. 長い出力は、そのまま渡さない

テストやログの出力は数千行になります。これをそのままAIに読ませると、それ以降の全部のやり取りに乗り続けます。要点だけを渡し、全文は別に保存する形にしました。実測で79〜97%減りました。

医療システムの開発では、間違いがそのまま患者さんに届きます。だから私たちは、AIの判断を人が後から確かめられる形で残すことを前提にしています。この設計は効率のためだけでなく、確かめられる状態を保つためのものでもあります。安全面の考え方はセキュリティの取り組みにまとめています。

院内で使うときにも、同じことが効きます

院内で生成AIが役に立つ場面は、記録以外にもたくさんあります。

  • 会議で出た意見の論点整理
  • 院内規程やマニュアルの下書き
  • 問い合わせへの返信文の下書き
  • 補助金申請の要件の読み解き

どれも「短い質問」では終わらず、やり取りを重ねながら詰めていく作業です。だからこそ、決まったことをその場で1枚のメモに落としながら進めるだけで、手戻りがはっきり減ります。特別なツールは要りません。

私たちはこの使い方を、机上の理屈ではなく自社の開発で毎日動かしています。上に挙げた数字も、他社の調査ではなく自分たちのセッションを数えたものです。

MENTRAは製品の提供だけでなく、医療機関のDX支援として院内の困りごとを一緒に整理し、実際に動く形になるところまで伴走しています。ChatGPTやClaudeを院内でどう使い始めるか、どの業務から手を付けるか、職員向けの操作レクチャーまで含めてご相談いただけます。MENTRAの導入有無は問いません。

「まず何から試せばいいか」を一緒に決めるところからで大丈夫です。お気軽にご相談ください。

↑ このページの先頭へ

まずは、30分だけ話を聞かせてください。

今の記録の流れを伺うところからで大丈夫です。資料の準備は不要です。

精神科病院からメンタルクリニックまで、規模を問わず。院内の運用に合わせた調整もご相談ください。