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精神科のカルテを音声入力で作るとき、誰の発言かをどう分けるか
精神科の診察室に、患者さんと医師の2人だけがいるとは限りません。ご家族が同席されることも、施設の職員の方が付き添われることも、日常的にあります。
音声入力でカルテの下書きを作るとき、ここが最初の分かれ目になります。誰が話したことなのかが分からない文字起こしは、カルテの材料になりません。 患者さんご本人が訴えられたことと、ご家族が心配して話されたことを、記録の中で同じ扱いにはできないからです。
精神科の診察室には、何人がいるのか
一般的な外来を思い浮かべると、診察は医師と患者さんの1対1で進むように見えます。精神科では、この前提が崩れる場面が少なくありません。
- ご家族が同席して、家庭での様子を補足される
- グループホームや施設の職員の方が、生活面の変化を伝えに来られる
- ご本人が来院できず、ご家族だけが来られる
いずれも、話す人が複数になります。しかも話された内容の意味が、話し手によって変わります。 ご本人が「眠れている」と言われたことと、同居のご家族が「夜中に起きている」と言われたことは、どちらも記録に残す価値がありますが、ひとつの行に混ぜてしまうと臨床の情報として成立しません。
音声入力で「誰が話したか」は、どうやって決まるのか
音声から記録を作る処理は、大きく2つの仕事に分かれます。ひとつは会話を文字にすること、もうひとつはその文字を話し手ごとに割り振ることです。後者は話者分離と呼ばれます。
この2つを一度にやらせると、どちらの精度も落ちます。文字にすることに引っ張られて話し手が混ざったり、話し手を分けることに引っ張られて聞き取りが粗くなったりするためです。
MENTRAでは2026年3月に、この2つの工程をいったん切り離しました。 まず会話を文字にし、そのうえで、できあがった文章に話し手を割り当てます。それぞれの工程が自分の仕事だけに集中できるので、両方の精度が上がりました。
精度が上がったので、もう一度ひとつに戻した
ここから先は、実際に運用してみて分かったことです。
工程を分けると精度は上がりますが、そのぶん時間がかかります。診察のたびに待たされるのでは、外来では使われません。そこで精度が安定していることを確かめたうえで、2026年6月に、この2つをもう一度ひとつの処理にまとめました。
分けたから精度が上がり、精度が上がったから統合しても崩れなくなった、という順番です。最初から統合していたら、この精度には届いていません。
現在、診察が終わってからカルテの下書きができあがるまでの中央値は16秒です(本番実測)。次の患者さんをお呼びするあいだに、下書きが揃っている状態になります。
推測に任せる範囲は、狭いほどよい
機械の側だけで話し手を当てにいくのではなく、分かっていることは先に渡すという作りにしています。
録音を始める前に、その診察が2名なのか、3名なのか、4名なのかを選びます。あわせて、それぞれが医師・患者・ご家族・スタッフ・付き添いのどれなのかを設定します。現場に増える操作は、録音前のこの選択だけです。
ご本人が来院されず、ご家族だけが来られた診察のためには、代理受診という選び方も用意しています。これを選んでおくと、話された内容がご本人の発言として記録されることがありません。
推測に委ねる範囲を狭くするほど、結果は安定します。現場に増える操作をひとつに抑えたうえで、機械の側の当てずっぽうを減らす。 これが、音声入力を外来で使い続けられる形にするための線引きだと考えています。
診察の形ごとに、録音前の選択と記録での扱いは次のようになります。
| 診察の形 | 話す人 | 録音前に選ぶこと | 記録での扱い |
|---|---|---|---|
| ご本人だけが来院 | 医師・患者さん | 2名/医師・患者 | 訴えと医師の確認が分かれて並ぶ |
| ご家族が同席 | 医師・患者さん・ご家族 | 3名/医師・患者・ご家族 | ご本人の「眠れている」とご家族の「夜中に起きている」を混ぜない |
| 施設の職員が付き添い | 医師・患者さん・スタッフ | 3名/医師・患者・スタッフ | 生活面の変化は、付き添われた方の発言として残る |
| ご本人が来院されない | 医師・ご家族 | 代理受診 | 話された内容が、ご本人の発言として記録されることがない |
それで、記録はどう変わるのか
できあがる下書きでは、患者さんが話されたこと、ご家族が話されたこと、医師が確認したことが分かれて並びます。診察の場では流していた一言が、あとから読み返したときに意味を持つことがあります。
導入医療機関で日々生まれている記録の1件ずつが、この工程を通っています。
診察の形は医療機関によって違います。同席される方が多い外来なのか、1対1が中心なのかで、必要な設定も変わります。AIカルテ・診療記録に仕組みをまとめていますので、貴院の診察の進め方に合わせた形はお気軽にご相談ください。
