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GAF尺度とは何か ― 精神科の記録で0〜100をどう付けるか

目次
  1. GAFは、どこで必要になるのか
  2. 10点刻みの帯 ― 0から100まで
  3. 点数の付け方 ― 3つの原則
  4. 例 ― 幻聴のある方を、どう見るか
  5. なぜ、付ける人によってぶれるのか
  6. 前月と比べるとき、何を見るのか
  7. 数字と本文が食い違うとき
  8. GAFを、月ごとに数えられる状態にしておく
  9. MENTRAでは、AIと人でどう分担しているか
  10. 付けた数字を、どう使える形で残すか
  11. 数字は、比べられて初めて意味を持つ

GAF尺度(Global Assessment of Functioning/機能の全体的評定)は、その人の症状と社会的機能を0から100までの1つの数字で表す評定尺度です。DSM-IVで多軸診断の第5軸として使われていたもので、いまも精神科の記録・報告書・訪問看護の計画で広く使われています。

数字ひとつなので扱いやすい一方、付ける人によってぶれるという性質があります。ここをどう扱うかが、実務では一番の論点になります。

精神科で使われる他の評価尺度(BPRS・PANSS・HAM-D など)と、それぞれを記録にどう残すかは精神科の評価尺度 一覧にまとめています。

GAFは、どこで必要になるのか

精神科訪問看護では、GAFは「付けられるなら付ける」ものではなく、書類に残すことが求められる項目です。

  • いつ評価するか — その月の初回訪問時に評価します。状態が大きく変われば、月の途中で付け直します
  • どこに書くか — 精神科訪問看護記録書(記録書Ⅱ)・精神科訪問看護報告書・訪問看護療養費明細書の3か所。報告書には判定した数値と判定日を書きます
  • 何に効くか — 令和6年度改定までは、訪問看護管理療養費1の施設基準の1つ(ロ)が「精神科訪問看護基本療養費を算定する利用者のうち、GAF尺度による判定が40以下の利用者の数が月に5人以上」でした。令和8年度改定(2026年6月施行)で、月の2日目以降の管理療養費1と2は統合されて施設基準の届出が不要になり、この基準は削除されています(個別改定項目の施設基準の新旧対照)。いまGAFが効くのは、精神科訪問看護の記録書・報告書への記載と、精神科在宅患者支援管理料(I016)の「GAF40以下」の判定です

つまりGAFは、臨床の評価であると同時に運営の数字でもあります。1人ぶんの点数を付ける話と、月ごとに何人いたかを数える話が、同じ数字の上に乗っています。

10点刻みの帯 ― 0から100まで

基本は10点刻みの帯で考えます。数字が下がるほど症状が重く、生活と社会的機能が損なわれている状態を表します。

下表は、厚生労働省が検討会資料として公開している「機能の全体的評定(GAF)尺度」の内容を、実務で当てはめやすいように要約したものです。各帯の正確な文言は、この原典に載っています。

点数帯 症状の側 生活・社会的機能の側
100〜91 症状は何もない 広い範囲の活動ができ、周囲から頼られている
90〜81 無いか、ごく軽い(試験前の不安など) どの面でも良好。日常のありふれた心配ごと以上のものはない
80〜71 あっても、ストレスに対する一過性で予期される範囲 ごくわずかな支障にとどまる
70〜61 軽い症状(抑うつ気分、軽い不眠など) いくらか困難はあるが全般には良好で、有意義な対人関係もある
60〜51 中等度(感情が平板、会話がまわりくどい、ときにパニック発作) 中等度の支障(友人が少ない、職場での葛藤)
50〜41 重い(自殺念慮、重い強迫儀式) 重い支障(友人がいない、仕事が続かない)
40〜31 現実検討や意思伝達に欠陥が出る 仕事・家族関係・判断・気分など多くの面で大きな欠陥
30〜21 行動が妄想や幻覚に相当影響されている ほとんどすべての面で機能できない
20〜11 自分や他人を傷つける危険がかなりある 最低限の身辺の清潔を保てないことがある
10〜1 その危険が続いている 持続的に保てない
0 情報不十分 ―

点数の付け方 ― 3つの原則

1段目 2段目 どの10点帯か(例: 41〜50) 帯の中で1の位(例: 45) 帯を先に決める。いきなり「45」から考えない 症状と機能で帯が割れたら、低いほうの帯を採る
GAFは2段階で決める。帯を先に決めてから、その中で1の位を決める

① 症状と機能の、低いほうを採る。 見るのは症状の重さと、社会的・職業的機能の低下の両方です。症状が軽くても生活が成り立っていなければ、その低いほうが全体像だという考え方です。身体的な制約による機能低下は含めません。あくまで精神症状に由来する部分を見ます。

② いちばん低かったところを見る。 その期間ずっと調子がよくて1日だけ崩れたなら、崩れたところを採ります。平均ではありません。

③ 帯を先に決めてから、1の位を決める。 いきなり「45」と考えると、根拠のない1の位を先に置いてしまいます。「重い症状があるから41〜50の帯」→「その中では中ほどだから45」という順に決めると、あとから説明できる数字になります。

例 ― 幻聴のある方を、どう見るか

帯の境目で迷ったときの考え方を、具体例で示します。

幻聴はあるが、内容に左右されず、家事も外出もできている。 症状は中等度ですが、生活は保たれています。この場合、症状の側で 51〜60、機能の側で 61〜70 となり、低いほうの 51〜60 を採ります。

幻聴の内容に従って行動してしまい、日中ほとんど動けない。 行動が幻覚に相当影響されているので 21〜30 の帯です。症状の側だけを見て「幻聴があるから50」と付けると、実態から大きく離れます。

幻聴は消えているが、外出も対人接触も避けたまま。 症状は軽くても機能は重い側にあります。ここでも低いほうを採ります。症状が消えたことを理由に点数を上げると、次に読む人が状態を読み違えます。

なぜ、付ける人によってぶれるのか

ぶれる理由は主に3つあります。

  • 見ている場面が違う ― 外来の20分と、訪問での1時間では見えるものが違う
  • 基準の当てはめ方が違う ― 帯の境目にあるとき、どちらに寄せるかは判断になる
  • 前回の値に引っ張られる ― 前回55だったから今回も55、という付け方が起きる

3つ目は特に厄介で、経過を見るための数字なのに、経過が見えなくなります。

研修で基準をそろえる取り組みは各所で行われていますが、研修だけでは3つ目が残ります。 前回の値が見えている状態で付ければ、誰でも引っ張られるからです。ぶれを減らす手当ては、人の心がけではなく付ける手順の側に置くほうが確実です。

前月と比べるとき、何を見るのか

GAFは1回だけ付けても情報量がほとんどありません。比べて初めて意味が出ます。

比べるときに見るのは、点数の差そのものではありません。帯をまたいだかどうかを見ます。55から52への3点は同じ帯の中の動きで、付けた人の感覚の幅に収まります。一方、52から48は帯をまたいでいるので、何かが変わったと考えて記録の本文を読み直す価値があります。

もうひとつ見るのは、症状と機能のどちらで下がったかです。同じ「10点下がった」でも、症状が悪化したのか、生活のほうが立ち行かなくなったのかで、次に打つ手が変わります。数字だけを並べるとここが消えるので、根拠を1行そえておくことが効いてきます。

数字と本文が食い違うとき

実務でいちばん困るのは、GAF45と書いてあるのに、記録の本文が「変わりなし」で終わっているような状態です。

45は「重い症状、または重い機能の支障」の帯です。本文がそれを裏づけていないと、次に読む人は「点数が惰性なのか、記録の書き漏らしなのか」を判断できません。書類の間で数字だけが独り歩きし、報告書を受け取る側からも確かめようがなくなります。

防ぎ方は単純で、数字と根拠を同じ場所に、同じタイミングで残すことです。別々のタイミングで別々の欄に書くと、片方だけが更新されます。

GAFを、月ごとに数えられる状態にしておく

令和6年度改定までは、GAF40以下の利用者が月に5人以上であることが訪問看護管理療養費1の施設基準の1つでした(令和8年度改定で削除)。基準から外れても、月の初回訪問時の値を記録書・報告書に残す要件は続きます。在宅の管理料では「GAF40以下」かどうかが算定の対象を分けるので、誰がいつ何点だったかを月ごとに数えられる状態は引き続き要ります。

ここが実務では抜けやすいところです。GAFを紙の記録書に手書きし、報告書へ転記し、明細書へまた転記している運用だと、「今月、40以下は誰と誰だったか」を知るには、その月の記録を全部めくることになります。 月末になってから数え始めると、確かめ直す時間が残りません。

数えられる状態にする条件は2つだけです。

  1. 点数が、記録と同じ場所に構造化されて残っていること(本文に紛れた数字は数えられない)
  2. 付けた日が一緒に残っていること(月の初回訪問時の値かどうかを、あとから確かめられる)

この2つが満たされていれば、集計は月末を待たずにいつでもできます。逆にどちらかが欠けていると、数えるための作業が毎月まるごと増えます。

MENTRAでは、AIと人でどう分担しているか

MENTRAの看護記録では、GAFの入力欄にAIが目安の値を出します。 記録した会話の内容から推定した値です。看護師の方はその値を確認し、必要に応じて手で調整します。

分担をこの向きにしたのには理由があります。評定は、その場で会話を聞いた人が決めるのがいちばん正確です。 一方で「毎回ゼロから考える」「前回の値をそのまま写す」という2つの失敗は、たたき台があるだけで減ります。

AIが出すのはその日の会話から見える範囲の目安なので、前回の値には引っ張られません。人が最終的に決めるという構造は変えずに、ぶれの原因のひとつを外している、という位置づけです。

付けた数字を、どう使える形で残すか

入力した値は、記録の本文とPDF出力にそのまま反映されます。数値の範囲ごとに色分けして表示されるので、どのあたりの評価なのかがひと目で分かります。

全体の状態についてのメモも、同じ画面から残せます。数字だけでは「なぜその値なのか」が伝わらないので、根拠になった様子を1行添えられるようにしてあります。数字と根拠が並んでいると、次に読む人が判断できます。前の節で書いた「数字と本文の食い違い」は、この2つを同じ画面・同じタイミングで残すことで起きにくくなります。

数字は、比べられて初めて意味を持つ

大事なのは、正確に付けることよりも同じ基準で付け続けられることです。付けるのに手間がかかると、忙しい日に飛ばされ、飛ばされた月があると比較ができなくなります。

MENTRAがGAFを記録の中に組み込んでいるのは、そのためです。別の紙に転記する作業を作らず、記録を書く流れの中で残るようにしています。AI看護記録に仕組みをまとめていますので、貴院で使われている評定の運用に合わせられるかは、お気軽にご相談ください。


参考

よくあるご質問

GAFは誰が付けるものですか

精神科訪問看護では、訪問した看護師が月の初回訪問時に評価します。MENTRAでは、その日の会話から推定した目安の値を記録の入力欄に置き、看護師の方が確認して確定します。目安はその日の会話だけから作るので、前回の値には引っ張られません。

月の途中で状態が大きく変わったときは、付け直しますか

付け直します。原則はその月の初回訪問時の評価ですが、状態が大きく変われば月の途中でも再評価します。付け直した日付も一緒に残しておくと、あとから経過を追えます。

身体の病気による生活のしづらさは、点数に含めますか

含めません。GAFで見るのは精神症状に由来する部分です。身体的な制約による機能低下は別に記録します。

前回と同じ点数が続くのは、問題がありますか

状態が変わっていなければ同じ点数で構いません。気をつけたいのは、前回の値を見ながら付けて引っ張られる場合です。根拠を1行そえておくと、同じ点数でも「見たうえで同じ」だと次に読む人に伝わります。

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