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精神科のSOAPは、他の科のSOAPと何が違うのか
SOAPは、S(主観的情報)・O(客観的情報)・A(評価)・P(計画)の4つで診療記録を整理する書き方です。医学教育で共通に教えられるので、どの科でも同じものが書かれていると思われがちです。
実際には中身が科によってかなり違います。 精神科のSOAPは、その差がとりわけ大きい部類に入ります。AIに下書きを作らせるなら、この差を無視できません。
SOAPは、どの科でも同じ形なのか
形は同じです。埋まる中身が違います。
内科や整形外科では、Oに検査値や画像所見、可動域といった数字が並びます。Sは症状の訴えで、比較的短く収まります。診断の根拠がOの側に厚く積まれる構造です。
精神科では、この重心が逆になります。診断と評価の根拠の多くが、会話の中にあります。 血液検査で気分の落ち込みは測れません。だからSが長くなり、そこに書かれた言葉そのものが臨床判断の材料になります。
精神科のSが長くなるのは、なぜか
患者さんの語りが、そのまま所見だからです。
「夜中に何度も目が覚める」「人の視線が気になって外に出られない」「薬を飲むと頭がぼんやりする」。これらは訴えであると同時に、症状の程度・経過・治療の反応を示す観察対象です。要約しすぎると、判断の材料が消えます。
だからといって会話をそのまま貼れば記録になるわけでもありません。診察の会話には、天気の話も、待合の混み具合の話も混ざります。残すべき語りと、残さなくてよい雑談を分けるのが、精神科のSを作る仕事の本体です。
精神科のOには、何を書くのか
数字が少ないぶん、Oには観察が入ります。表情、話す速さ、身なり、目線、面接中の落ち着き。診察室で医師が見て取ったことです。
ここで問題になるのは、Oの材料は会話の中に言葉として現れないことが多いという点です。医師が「今日は少し落ち着かない様子」と口に出さなければ、録音には残りません。
MENTRAでは、会話から取れないものを取れたことにしません。音声から確かに拾えるものを下書きにし、観察の記載は医師が確認のときに足すという分担にしています。ここを曖昧にすると、書かれていないことが記録に載ることになります。
同じSOAPという形でも、科によって重心がここまで変わります。
| 見るところ | 内科・整形外科など | 精神科 |
|---|---|---|
| 診断の根拠が積まれる側 | O。検査値、画像所見、可動域といった数字 | S。会話の中の語りそのもの |
| Sに入るもの | 症状の訴え。比較的短く収まる | 症状の程度・経過・治療の反応まで含む。要約すると判断の材料が消える |
| Oに入るもの | 数字で測れる所見 | 表情、話す速さ、身なり、目線、面接中の落ち着き |
| Oの材料がどこにあるか | 検査や測定の結果として残る | 医師が口に出さなければ録音に残らない。確認のときに足す |
診療科ごとに、書き分けるという作り方
2026年5月から、MENTRAは診療科ごとにSOAPの書き方を分けて持っています。 同じ音声を渡しても、精神科のSOAPと、他科のSOAPでは、整え方が変わります。
「精神科向け」とひとくくりにしないほうが、記録は実用に近づきます。 同じ精神科の中でも、診療科や外来の性格によって記録に求められるものは違います。 記録の種別を増やしても現場の操作が増えないようにしてあるので、種別を分けることのコストは現場側にはかかりません。
会話の概要と、記録の原本を分けて持つ
SOAPの整え方をどれだけ工夫しても、元の会話に戻れることは別に必要です。要約された記録だけが残ると、「本当にそう言われたのか」を確かめる手段がなくなります。
MENTRAでは、整えたSOAPと、会話の原本にあたる文字起こしの両方を残しています。画面上で切り替えて見られるので、記載の根拠をその場で確かめられます。
現在、診察が終わってからSOAPの下書きができるまでの中央値は16秒です。そして作られた下書きの大半が、医療者の手元で確認・修正を経て確定まで進んでいます。作られたまま放置される記録ではなく、日々の診療の中で使われている、ということです。
精神科のSOAPは、施設ごとに書き方の慣習が残っている領域でもあります。AIカルテ・診療記録に仕組みをまとめていますので、いま院内で使われている書式に合わせられるかどうかは、実際の記録をお見せいただければ具体的にお答えできます。
