テックブログ
CGIとは何か ― 精神科の評価で「全般印象」を1〜7で残す
目次
CGI(Clinical Global Impression/臨床全般印象)とは、疾患の重さと改善の程度を、それぞれ1〜7の1つの数字で表す面接者評価の尺度です。1976年に米国国立精神衛生研究所(NIMH)が公表したもので、パブリックドメインなので許諾なしで使えます。
精神科の評価尺度の多くは項目が10〜30あって面接に時間がかかりますが、CGIは約1分で付けられるのが特徴です。そのぶん「何を見てその数字にしたか」を残す工夫が要ります。この記事では、CGIの構成と付け方、そして記録に残すときに起きる問題を整理します。
CGIは、どこで使われるのか
CGIは診療報酬の算定要件に名指しで出てくる尺度ではありません。使われる場面は主に3つです。
- 臨床試験 — 主要評価項目のPANSSやHAM-Dと並べて、全体像の要約として付けます
- 外来の経過の要約 — 30項目の尺度を毎回付ける時間がないとき、全体の印象を1つの数字で残すとき
- 疾患をまたいだ比較 — 統合失調症でもうつ病でも同じ1〜7で表せるので、病棟全体の状態を並べて見るとき
GAFと似た「1つの数字」の尺度ですが、GAFが症状と社会的機能を0〜100で表すのに対し、CGIは疾患の重さそのものを1〜7で表します。
2つの尺度 ― CGI-SとCGI-I
CGIは2つの下位尺度からできています。CGI-S(Severity/重症度)とCGI-I(Improvement/改善度)です。どちらも1〜7の7段階で、0は「判定不能」です。
| 点 | CGI-S(重症度) | CGI-I(改善度) |
|---|---|---|
| 0 | 判定不能 | 判定不能 |
| 1 | 正常、まったく病気ではない | 著明に改善 |
| 2 | 境界域 | 中等度に改善 |
| 3 | 軽度 | 軽度に改善 |
| 4 | 中等度 | 変化なし |
| 5 | やや重度 | 軽度に悪化 |
| 6 | 重度 | 中等度に悪化 |
| 7 | 最重度 | 著明に悪化 |
CGI-Sは「この疾患を持つ患者さんの中で、いまどのくらい重いか」を面接者の経験に照らして付けます。CGI-Iは「初回評価時と比べてどのくらい変わったか」を付けます。この「初回評価時と比べて」が、記録で問題になります(後述)。
原著には、治療の効果と副作用を組み合わせた有効性指標(Efficacy Index)も含まれていますが、いまはCGI-SとCGI-Iの2つだけを使うことがほとんどです。
付け方の原則 ― 1分で付けられる理由と、その裏側
CGIは項目が1つずつしかないので、面接のあと約1分で付けられます。その代わり、評点の根拠は面接者の臨床経験にもとづく全体の印象です。PANSSの30項目のように「この項目がこの点だから」という積み上げがありません。
そのため、同じ患者さんを別の面接者が付けたときのずれは、項目型の尺度より大きくなりえます。評価者トレーニングで揃えるか、同じ患者さんは同じ面接者が付け続ける、という運用のどちらかが要ります。
CGI-Iを付けるときの原則は、基準を初回評価時に固定することです。前回の受診と比べて「少し良い」を繰り返すと、初回からは大きく改善しているのにCGI-Iが毎回3、という記録になります。逆に初回からの比較なら、改善が積み上がって2や1になっていきます。
記録に残すとき、何が起きるか
CGIは数字が1つだけなので、記録に残すときの問題は他の尺度より鮮明です。
「4」だけが残って、何を見た4なのかが残らない。 PANSSなら項目ごとの点から全体像を再構成できますが、CGI-S 4は面接者の印象そのものです。何を見てその数字にしたかを1行そえておかないと、次に読む人には4という数字しか伝わりません。
CGI-Iの基準日が残らない。 「CGI-I 3」と書いてあっても、いつと比べた3なのかが書かれていないと、解釈できません。基準日(初回評価日)を記録の中に持っておく必要があります。転院や担当医の交代で基準がずれることもあるので、そのときは基準日を書き換えたことも残します。
前回の数字に引っ張られる。 1〜7の数字は動かしにくく、前回が4なら今回も4になりがちです。これは項目型の尺度でも起きますが、CGIは数字が1つしかないぶん、動かなさが記録に出ます。付けるときは前回を見ず、付けてから比べる順番が要ります。
項目型の尺度と組み合わせる
CGIは単独で使うより、項目型の尺度と組み合わせたときに役割がはっきりします。PANSSやHAM-Dで項目ごとの動きを残し、CGIで面接者の全体の印象を残す。両方が同じ方向を向いていれば読みやすく、ずれていればそれ自体が情報です。項目の合計は下がっているのにCGI-Iが4(変化なし)なら、面接者は数字に出ない何かを見ています。それを本文に書く価値があります。
MENTRAでは、尺度をどう記録に置いているか
MENTRAの看護記録では、GAFの入力欄を記録を書く流れの中に置き、その日の会話から作った目安の値と、看護師の方が確定した値、根拠の1行を同じ画面に残しています(看護記録にGAF尺度を追加しました)。数字だけでは「なぜその値なのか」が伝わらないので、根拠になった様子を1行添えられるようにしてあります。
CGIのように1つの数字で残す尺度では、この「根拠の1行」と「基準日」を数字と同じ場所に持つことが、あとから読めるかどうかを分けます。貴院で使っている尺度や様式に合わせて記録の欄を組めるかは、個別に検討してご提案しています。AIカルテ・診療記録の仕組みとあわせて、お気軽にご相談ください。
参考
- 一般社団法人 日本精神科評価尺度研究会「精神科領域の症状評価尺度 正式略称一覧」(CGI = Clinical Global Impressions)
- Guy W (ed). ECDEU Assessment Manual for Psychopharmacology, Revised. US Department of Health, Education, and Welfare, National Institute of Mental Health, 1976(原著。CGI-S・CGI-I・有効性指標)
- Progress in Mind Japan Resource Center「CGI(Clinical Global Impression)」(段階の説明・所要時間・パブリックドメインであること。ルンドベック・ジャパンの運営)
よくあるご質問
CGIはGAFとどう違いますか
どちらも1つの数字で全体像を表す尺度ですが、GAFは症状と社会的機能を0〜100で、CGIは疾患の重さを1〜7で表します。GAFは診療報酬の要件に出てきますが、CGIは主に臨床試験と経過の要約に使われます。
CGI-Iはいつと比べればよいですか
原則は初回評価時(治療開始時)との比較です。前回の受診と比べるものではないので、基準日をいつにしたかを記録に残しておかないと、あとから読む人が解釈できません。
診療報酬に関係しますか
CGIそのものが算定要件に出てくる項目はありません。臨床試験では主要評価項目のPANSSやHAM-Dと並べて、全体像の要約として付けられます。
使用に許諾は要りますか
米国国立精神衛生研究所(NIMH)が1976年に公表したもので、パブリックドメインです。許諾なしで使えます。
