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HAM-Dの評価とは ― 17項目の付け方と、記録に残すときの原則

目次
  1. HAM-Dは、どこで使われるのか
  2. 17項目の構成 ― 評点の範囲が項目で違う
  3. 合計点の帯 ― 目安として使う
  4. 付け方の原則 ― 評価期間と面接
  5. 記録に残すとき、何が起きるか
  6. 経過を見るときは、帯と項目で見る
  7. MENTRAでは、尺度をどう記録に置いているか

HAM-D(Hamilton Depression Rating Scale/ハミルトンうつ病評価尺度)とは、面接者が付ける、うつ病の重症度の目安を示す評価尺度です。1960年にMax Hamiltonが発表し、抗うつ薬の臨床試験では長く標準の指標として使われてきました。17項目版と、これに4項目を加えた21項目版があり、主に使われるのは17項目版です。

HAM-Dの評価で押さえておきたいのは、項目によって評点の範囲が違うこと、そして合計点を帯で読むことの2つです。この記事では構成と付け方の原則、そして点数を記録に残すときに起きる問題を整理します。

HAM-Dは、どこで使われるのか

HAM-Dは、診療報酬では「D285 認知機能検査その他の心理検査」の「操作が容易なもの(その他のもの)」(80点)に、HDRS ハミルトンうつ病症状評価尺度として名前が挙がっています(令和8年度の留意事項通知 D285 (10))。臨床で使われる場面は主に3つです。

  • 臨床試験 — 抗うつ薬の有効性を示す主要な指標として、半世紀以上使われています
  • 外来・入院での経過の記録 — 治療の開始時と、薬を変えた前後、寛解の判断のとき
  • 自己記入式との組み合わせ — 患者さんが付けるPHQ-9などと並べて、面接者の見立てとの差を見るとき

HAM-Dは他者評価(面接者が付ける)の尺度です。患者さん自身が付ける自己記入式のうつ病尺度とは役割が違い、両方を並べると「本人の実感」と「面接者の見立て」の差が見えます。

17項目の構成 ― 評点の範囲が項目で違う

HAM-D 17項目版の項目は次のとおりです。項目によって0〜4点の5段階と0〜2点の3段階が混ざっているのが特徴で、ここを取り違えると合計が合わなくなります。

番号 項目 評点の範囲
1 抑うつ気分 0〜4
2 罪責感 0〜4
3 自殺傾向 0〜4
4 入眠障害 0〜2
5 熟眠障害 0〜2
6 早朝睡眠障害 0〜2
7 仕事と活動 0〜4
8 精神運動抑制 0〜4
9 焦燥 0〜4
10 精神的不安 0〜4
11 身体的不安 0〜4
12 消化器系の身体症状 0〜2
13 一般的な身体症状 0〜2
14 生殖器症状 0〜2
15 心気症 0〜4
16 体重減少 0〜2
17 病識 0〜2

0〜4点の項目が9つ、0〜2点の項目が8つで、合計点の範囲は0〜52点です。21項目版はこれに日内変動・離人症・妄想様観念・強迫症状を加えたものですが、重症度の合計は17項目で出すのが一般的です。

合計点の帯 ― 目安として使う

HAM-D 17項目の合計点の帯は、外来のうつ病患者627人で軽症・中等症・重症の区切りを検討した研究(Zimmerman ほか 2013)が、次の帯を推奨しています。

合計点 目安
0〜7 正常の範囲
8〜16 軽症
17〜23 中等症
24以上 重症

臨床試験では「7点以下」を寛解の目安に置くことが多く、治療の前後で合計点が半分以下になったことを反応の目安にします。ただし帯の区切りは研究によって少しずつ違うので、記録にはどの帯の区切りを使ったかを残しておくと、あとから読む人が迷いません。

付け方の原則 ― 評価期間と面接

評価期間は過去1週間です。面接者が患者さんと面接し、話の内容と面接中の様子から各項目を付けます。所要時間は10〜20分が目安です。

HAM-Dは項目の定義が比較的短く、評価者によって解釈の幅が出やすいことが以前から指摘されています。そのため、質問の仕方と評点の基準を細かく定めた構造化面接ガイド(GRID-HAMDなど)が作られ、日本語版の評価トレーニングも整備されています。評価者間のぶれを減らすには、同じ施設の中で同じガイドを使うことが要ります。

もう一つ、睡眠の3項目(入眠・熟眠・早朝)は0〜2点なので、睡眠の訴えが強くても合計への寄与は最大6点です。合計点の動きを見るときは、睡眠だけが改善したのか、抑うつ気分や活動の項目が動いたのかを分けて見る必要があります。

記録に残すとき、何が起きるか

HAM-Dを付けたあと、記録に残す段階で起きる問題は3つです。

点数だけが残って根拠が残らない。 「HAM-D 16」とだけ書かれていると、次に読む人は睡眠が悪いのか、抑うつ気分が強いのか分かりません。高かった項目とその根拠を1行そえるだけで、次の評価者が同じ基準で付けられます。

前回の点数に引っ張られる。 前回の評価表を見ながら付けると、変わっていないはずの項目が本当に変わっていないのか、前回の値をなぞっただけなのか区別がつかなくなります。付けるときは前回を見ず、付け終わってから比べる、という順番が要ります。

本文と点数が食い違う。 記録の本文には「よく眠れるようになった」とあるのに、入眠障害が前回と同じ2、という記録は、本文と点数を別の場所・別のタイミングで書くと起きます。同じ画面・同じタイミングで残すと、食い違いは起きにくくなります。

経過を見るときは、帯と項目で見る

HAM-Dを経時で並べるとき、合計点の差だけで判断すると、評価者のぶれを変化と読んでしまいます。見るべきなのは帯をまたいだかとどの項目が動いたかです。合計が20から18に下がっても、同じ中等症の帯の中なら「大きくは変わっていない」と読むのが安全で、逆に17から16なら帯をまたいでいるので、何が動いたのかを本文に書く価値があります。

MENTRAでは、尺度をどう記録に置いているか

MENTRAの看護記録では、GAFの入力欄を記録を書く流れの中に置き、その日の会話から作った目安の値と、看護師の方が確定した値、根拠の1行を同じ画面に残しています(看護記録にGAF尺度を追加しました)。別の紙に転記する作業を作らず、数字と根拠が同じ場所に並ぶようにするためです。

HAM-Dのように面接で付ける尺度も、点数・評価日・根拠を記録の本文と同じ場所に残すという形は同じです。項目ごとの点数を構造化して残しておけば、帯をまたいだかどうかも、動いた項目も、あとから数え直さずに出せます。貴院で使っている尺度や様式に合わせて記録の欄を組めるかは、個別に検討してご提案しています。AIカルテ・診療記録の仕組みとあわせて、お気軽にご相談ください。


参考

よくあるご質問

HAM-Dは患者さんが自分で付けるものですか

いいえ、面接者(医師や訓練を受けた評価者)が面接をして付ける他者評価尺度です。患者さん自身が付ける自己記入式のうつ病尺度にはPHQ-9などがあり、役割が違います。

17項目版と21項目版はどう違いますか

主に使われるのは17項目版です。21項目版はこれに日内変動・離人症・妄想様観念・強迫症状の4項目を加えたもので、重症度の合計は17項目で出すのが一般的です。

MADRSとはどう使い分けますか

HAM-Dは身体症状や不安の項目を含む幅広い構成、MADRSは抑うつの中核症状10項目に絞った構成です。治療による変化を追う目的ではMADRSが使われることが多く、両方を並行して付ける臨床試験もあります。

前回と2点下がったら改善と言えますか

2点の差は評価者のぶれの範囲に入ることがあります。帯(たとえば17〜23から8〜16へ)をまたいだか、どの項目が動いたかで見るほうが、次に読む人に伝わります。

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