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HDS-RとMMSEの違い ― 配点・区切り(20点と23点)・22点の読み方

目次
  1. 精神科で、どこで必要になるのか
  2. HDS-Rの構成 ― 9問・30点・区切り20/21点
  3. MMSEの構成 ― 11項目・30点
  4. 「22点」の読み方 ― 同じ点数でも検査で意味が変わる
  5. 精神科で、点数と一緒に残す3つのこと
  6. 記録に残すとき、何が起きるか
  7. MENTRAでは、検査の結果をどう記録に置くか

HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)とMMSE(Mini-Mental State Examination)は、どちらも認知機能のスクリーニング検査で、30点満点です。HDS-Rは1974年に長谷川らが作った検査を1991年に改訂したもの、MMSEは1975年にFolsteinらが発表したもので、日本の臨床ではこの2つが最もよく使われます。

精神科でこの2つを使うときに気をつけたいのは、抑うつ・薬・睡眠・不安で点が動くことです。認知機能そのものの低下と、その日の状態による点の下がりを、点数だけでは区別できません。この記事では、2つの検査の違いと、精神科で点数と一緒に残すべき3つのことを整理します。

精神科で、どこで必要になるのか

HDS-RとMMSEは、認知症の鑑別の補助として使われる検査です。精神科では、次の場面で出てきます。

  • 高齢の患者さんの初診 — 気分の症状と認知機能の低下を分けて考える入口として
  • 抑うつが改善したあとの再評価 — 抑うつのときに低かった点が、改善後にどうなったかを見るとき
  • 薬を変えた前後 — 鎮静や抗コリン作用のある薬を減らした前後で、点がどう動いたかを見るとき
  • 障害年金や手帳の診断書 — 認知機能の状態を数字で添えるとき

診療報酬では、長谷川式・MMSEはD285 認知機能検査その他の心理検査の「操作が容易なもの・簡易なもの」(80点)に入り、算定のためにも検査日と結果を診療録に残します。

HDS-Rの構成 ― 9問・30点・区切り20/21点

HDS-Rは9つの質問からなり、道具はほぼ要りません(5つの物品を使う問題があります)。所要時間は5〜10分です。

番号 問題 測る内容 満点 採点のきまり
1 年齢 自己に関する見当識 1 2年までの誤差は正答
2 年・月・日・曜日 日時の見当識 4 各1点
3 今いる場所 場所の見当識 2 自発で2点、ヒントで1点
4 3つの言葉の記銘 即時記憶 3 各1点
5 計算(100から7を順に) 計算・ワーキングメモリー 2 各1点。最初に失敗したらそこで終了
6 数字の逆唱 ワーキングメモリー 2 各1点。最初に失敗したらそこで終了
7 3つの言葉の遅延再生 近時記憶 6 自発で各2点、ヒントで各1点
8 5つの物品記銘 視覚性の記銘 5 各1点
9 野菜の名前 言語の流暢性 5 6個目から1点ずつ、最高5点
合計 30

配点が大きいのは問7の遅延再生(6点)と、問8・問9(各5点)です。問4から問7はこの順番で続けて行います(加藤伸司「改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)の理解と活用」)。

30点満点で、20点/21点を区切りに、20点以下を認知症の疑いと判定するのが一般的です。日本で作られた検査なので、日本語の言い回しや文化に沿った設問になっています。

MMSEの構成 ― 11項目・30点

MMSEは11項目からなり、見当識・記銘・注意と計算・再生・言語(呼称・復唱・理解・読字・書字)・図形の模写を含みます。HDS-Rとの大きな違いは、動作を伴う項目(文を書く・図形を写す・指示に従って動く)があることです。30点満点で、区切りは研究によって23/24点などが用いられます。

MMSEは権利者が管理している検査で、正規の用紙を使うのが原則です。この記事では項目の文言は扱いません。

HDS-R MMSE
問題数 9問 11項目
満点 30点 30点
認知症の疑いの目安 20点以下(感度93%・特異度86%) 23点以下(感度81%・特異度89%)
ほかの目安 ― 27点以下で軽度認知障害(MCI)の疑い
動作を伴う項目 なし あり(書字・模写・指示動作)
所要時間 6〜10分 6〜10分
用紙 公開されている 権利者の正規版を使う
保険の算定 D285「操作が容易なもの・簡易なもの」80点 同じ区分・80点

目安の数字と所要時間は日本老年医学会の整理によります(認知機能の評価法と認知症の診断)。

「22点」の読み方 ― 同じ点数でも検査で意味が変わる

HDS-R の22点 MMSE の22点
目安との位置 目安(20点以下)より上 目安(23点以下)の内側
読み方の例 認知症の疑いの目安には入らないが、満点との差8点の中身を見る 認知症の疑いの目安に入る。どの領域で落としたかを見る

同じ30点満点でも、目安の位置が3点ずれているので、22点は HDS-R では目安の上、MMSE では目安の内側です。記録に「22点」とだけ書くと、次に読む人がどちらの検査かで読みを取り違えます。検査名と目安の位置を点数の横に書くのが、取り違えを防ぐ短い方法です。精神科では、点数に加えて次の3つを残すと読み違いが減ります。

精神科で、点数と一緒に残す3つのこと

ここが、認知症の解説には書かれていない、精神科の実務の話です。

1つ目は、検査時の状況。 抑うつが強いとき、鎮静のある薬を使っているとき、前夜眠れていないとき、不安や緊張で集中できないとき、点は下がります。点数だけを残すと、次に読む人はそれを認知機能の低下と読みます。その日の気分・睡眠・服薬の状態を、点数と同じ場所に1行残しておきます。

2つ目は、落とした項目。 総点が22点でも、遅延再生で落としたのか、計算で落としたのか、野菜の名前で落としたのかで意味が違います。抑うつでは注意と計算が落ちやすく、記憶の障害では遅延再生が落ちやすい、という傾向があります。項目ごとの点を残すと、総点が同じでも中身の違いが読めます。

3つ目は、再検査の時期と系列。 短い間隔で繰り返すと問題を覚えてしまい、点が上がります。保険の算定も、HDS-R・MMSE は原則として3月に1回です(3月以内に2回以上行うときは、診療報酬明細書の摘要欄に理由と医学的根拠を書きます)。HDS-R の言葉の記銘(問4・問7)には2つの系列があり、再検査では前回と別の系列を使うためのものです。いつ・どちらの系列で付けたかを残すと、点の上昇を「覚えていた」のか「回復した」のか区別しやすくなります。抑うつの改善後に再検査するなら、その意図も一緒に書いておきます。

記録に残すとき、何が起きるか

点数だけが残る。 上の3つが抜けて「HDS-R 22」だけが残ると、次に読む人には認知機能の低下にしか見えません。

別の紙に残る。 検査用紙が診療録に綴じられるだけだと、経過を追うときにめくる作業が要ります。検査日・総点・落とした項目・状況を記録の本文と同じ場所に置きます。

違う検査の点が並ぶ。 HDS-RとMMSEはどちらも30点満点ですが、目安の位置が違うので、同じ列に並べると経過が読めなくなります。どちらの検査かを必ず残します。また、同じ日に両方を行っても、保険の算定は主たるもの1種類です(D285 認知機能検査その他の心理検査)。両方の点を残すなら、どちらを算定したかも記録の側で分かるようにしておきます。

MENTRAでは、検査の結果をどう記録に置くか

MENTRAの看護記録では、GAFの入力欄を記録を書く流れの中に置き、その日の会話から作った目安の値と、看護師の方が確定した値、根拠の1行を同じ画面に残しています(看護記録にGAF尺度を追加しました)。数字だけでは「なぜその値なのか」が伝わらないので、根拠になった様子を1行添えられるようにしてあります。

HDS-RやMMSEのように「その日の状況」が点数の解釈を左右する検査では、状況の1行と落とした項目を点数と同じ場所に持つことが、あとから読めるかどうかを分けます。貴院で使っている検査や様式に合わせて記録の欄を組めるかは、個別に検討してご提案しています。AIカルテ・診療記録の仕組みとあわせて、お気軽にご相談ください。


参考

  • 加藤伸司「改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)の理解と活用」老年臨床心理学研究 2023; 4(9問の構成・配点と採点のきまり・問4〜7の順番・2つの系列・20/21点の区切り。J-STAGE)
  • 日本老年医学会「認知機能の評価法と認知症の診断」(HDS-R 20点以下・MMSE 23点以下の感度と特異度、MMSE 27点以下とMCI、所要時間)
  • 今日の臨床サポート「D285 認知機能検査その他の心理検査」(簡易なもの80点・原則3月に1回・同一日は主たるもの1種類)
  • 加藤伸司・長谷川和夫ほか「改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)の作成」老年精神医学雑誌 1991; 2: 1339-1347(改訂版の原著)
  • Folstein MF, Folstein SE, McHugh PR. “Mini-mental state”. A practical method for grading the cognitive state of patients for the clinician. Journal of Psychiatric Research 1975; 12(3): 189-198(MMSE 原著)

よくあるご質問

HDS-RとMMSEはどちらを使えばよいですか

HDS-Rは日本で作られ、質問と記憶の項目が中心で、道具がほぼ要りません。MMSEは国際的に広く使われ、図形の模写や文の読み書きなど動作の項目を含みます。施設で使い慣れているほうを続けるのが基本で、経過を追うなら同じ検査を使い続けます。

精神科で点数が低く出るのはどんなときですか

抑うつが強いとき、鎮静のある薬を使っているとき、睡眠が不足しているとき、不安や緊張で集中できないときです。認知機能そのものの低下と区別するために、検査時の状況を点数と一緒に残しておきます。

何回も同じ検査をしてもよいですか

短い間隔で繰り返すと、問題を覚えてしまって点が上がります。保険の算定も原則として3月に1回です。HDS-Rの言葉の記銘には2つの系列があり、再検査では前回と別の系列を使います。時期と系列を記録に残します。

長谷川式とMMSEで22点だったら、どう読みますか

HDS-Rは20点以下、MMSEは23点以下が認知症の疑いの目安なので、22点はHDS-Rでは目安の上、MMSEでは目安の内側です。同じ点数でも読みが変わるので、記録には検査名と区切りの位置を点数の横に書きます。

保険の点数はいくらですか

どちらもD285 認知機能検査その他の心理検査の「1 操作が容易なもの」の「イ 簡易なもの」で80点です。原則として3月に1回で、同じ日に両方を行っても算定は主たるもの1種類です。

MMSEの検査用紙を自前で作ってもよいですか

MMSEは権利者が管理している検査で、正規の用紙を使うのが原則です。HDS-Rは公開されていて広く使われています。

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