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LSASとは何か ― 社交不安を「恐怖」と「回避」の2軸で残す

目次
  1. LSASは、どこで使われるのか
  2. 24場面×2軸の構成
  3. 合計点の目安
  4. 付け方の原則 ― 面接か自己記入か
  5. 記録に残すとき、何が起きるか
  6. MENTRAでは、尺度をどう記録に置いているか

LSAS(Liebowitz Social Anxiety Scale/リーボヴィッツ社交不安尺度)とは、社交不安の程度を、24の場面それぞれについて「恐怖・不安」と「回避」の2つの軸で0〜3点で付ける尺度です。1987年にLiebowitzが発表し、日本語版のLSAS-Jは信頼性と妥当性が検証されて臨床試験にも使われています。

LSASの構造は他の尺度と少し違います。項目が「症状」ではなく「場面」で、しかも1つの場面に2つの点を付けます。この記事では、その構造と付け方、日本語版の位置づけ、そして点数を記録に残すときに起きる問題を整理します。

LSASは、どこで使われるのか

日本語版のLSAS-Jは、診療報酬では「D285 認知機能検査その他の心理検査」の「操作が容易なもの(簡易なもの)」(80点)に名前が挙がっています(令和8年度の留意事項通知 D285 (10))。臨床で使われる場面は主に3つです。

  • 社交不安症の経過の記録 — 治療開始時と、薬物療法や認知行動療法の前後で症状の広がりを残すとき
  • 臨床試験 — 社交不安症を対象にした試験で、主要な指標として使われます
  • 恐怖と回避の比重を見るとき — 同じ合計点でも、恐怖が主なのか回避が主なのかで治療の入口が変わります

24場面×2軸の構成

LSASの24場面は、行為状況(人前で何かをする場面)13と、社交状況(人と関わる場面)11に分かれます。それぞれの場面について、次の2つを付けます。

軸 0 1 2 3
恐怖・不安 まったく感じない 少し感じる はっきり感じる 非常に強く感じる
回避 まったく回避しない 回避することがある(1/3以下) 回避する(1/2程度) ほとんど回避する(2/3以上)

24場面×2軸で48の点があり、合計点の範囲は0〜144点です。小計としては、恐怖の合計(0〜72)と回避の合計(0〜72)、あるいは行為状況の合計と社交状況の合計、という2通りの分け方ができます。

分け方 小計 何が読めるか
恐怖/回避 各0〜72 つらさを抱えて出ているのか、場面を避けているのか
行為状況/社交状況 13場面/11場面 人前で何かをするのが苦手か、人と関わるのが苦手か

合計点の目安

合計点 読み方の目安
〜30 社交不安が生活に及ぶ範囲は限られる
30〜60 特定の場面に社交不安がある
60〜 社交不安が生活の広い範囲に及んでいる

研究では30点付近と60点付近を区切りに置くことが多く、日本語版でも症例群と健常群の比較にもとづいて位置づけが検討されています。点数だけで何かが決まるものではなく、面接の材料です。

付け方の原則 ― 面接か自己記入か

原著のLSASは面接者が付ける尺度として作られました。いまは患者さんが自分で付ける自己記入式の版(LSAS-SR)も広く使われていて、所要時間は10分程度です。どちらで付けたかで点数の意味が少し変わるので、記録に残しておきます。

評価する期間は過去1週間が原則です。回避の項目は「その場面に出会ったとしたら」という想定で付けることがあるので、実際にその場面が過去1週間になかった場合の扱いを、施設の中で揃えておきます。

もう一つ、恐怖と回避を別々に考えて付けることが要ります。恐怖が3なら回避も3、と機械的に付けると、2軸にした意味がなくなります。恐怖は強いのに毎回その場面に出ている人(恐怖3・回避0〜1)は、実際にいます。

記録に残すとき、何が起きるか

合計点だけが残って、小計が残らない。 LSAS 72とだけ書かれていると、恐怖が主なのか回避が主なのか、行為場面が苦手なのか社交場面が苦手なのかが分かりません。恐怖と回避の小計は最低限、できれば行為と社交の小計も残します。

どの版で付けたかが残らない。 面接で付けた点と自己記入の点を、同じ列に並べると経過が読めなくなります。版を記録に残します。

前回の点数に引っ張られる。 24場面を付けるとき、前回の用紙を見ながらだと動いたはずの場面が動かなくなります。付けるときは前回を見ず、付け終わってから比べる順番が要ります。

MENTRAでは、尺度をどう記録に置いているか

MENTRAの看護記録では、GAFの入力欄を記録を書く流れの中に置き、その日の会話から作った目安の値と、看護師の方が確定した値、根拠の1行を同じ画面に残しています(看護記録にGAF尺度を追加しました)。別の紙に転記する作業を作らず、数字と根拠が同じ場所に並ぶようにするためです。

LSASのように小計に意味がある尺度では、48の点を構造化して残しておけば、恐怖/回避と行為/社交のどちらの小計も、あとから数え直さずに出せます。貴院で使っている尺度や様式に合わせて記録の欄を組めるかは、個別に検討してご提案しています。AIカルテ・診療記録の仕組みとあわせて、お気軽にご相談ください。


参考

よくあるご質問

LSASは誰が付けるものですか

原著は面接者が付ける尺度として作られました。いまは患者さんが自分で付ける自己記入式の版(LSAS-SR)も広く使われています。日本語版のLSAS-Jは信頼性と妥当性が検証され、臨床試験でも使われています。

合計点が何点なら社交不安症ですか

点数だけで決まるものではありません。研究では30点付近と60点付近を区切りに置くことが多く、60点を超えると社交不安が生活の広い範囲に及んでいると読むのが一般的です。

恐怖の点と回避の点は同じになりますか

ならないことが多く、そのずれが手がかりです。恐怖は強いのに回避が低い人は、つらさを抱えながら場面に出ている状態です。逆に回避が高い人は、場面そのものを避けているので恐怖の点が低く出ることがあります。

所要時間はどのくらいですか

24場面について2つずつ答えるので、自己記入で10分程度が目安です。面接で付ける場合は、場面の具体を確かめながら進めるのでもう少しかかります。

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