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DIEPSSとは何か ― 薬原性錐体外路症状を9項目で残し、加算の要件を満たす
DIEPSS(Drug-Induced Extrapyramidal Symptoms Scale/薬原性錐体外路症状評価尺度)とは、抗精神病薬による錐体外路症状を、個別症状8項目と概括重症度1項目の計9項目で評価する尺度です。1994年に稲田俊也が開発した日本発の尺度で、いまは日本精神科評価尺度研究会が管理し、日本語版・英語版のトレーニング教材が整備されています。
DIEPSSが他の評価尺度と違うのは、診療報酬の要件に直結していることです。通院・在宅精神療法の特定薬剤副作用評価加算は、薬原性錐体外路症状評価尺度を用いた評価と、その結果の診療録への記載が要件になっています。この記事では、DIEPSSの構成と付け方、遅発性ジスキネジアの尺度AIMSとの使い分け、そして加算の要件を満たす記録の残し方を整理します。
DIEPSSは、どこで必要になるのか
DIEPSSが必要になる場面は、大きく2つです。
1つ目は、特定薬剤副作用評価加算の算定。 通院・在宅精神療法の注5に置かれている加算で、抗精神病薬を服用中の患者さんについて、精神保健指定医またはこれに準ずる者が、通常行うべき副作用の確認に加えて、薬原性錐体外路症状評価尺度を用いて定量的かつ客観的に評価し、そのうえで薬物療法の治療方針を決めた場合に、月1回25点を算定できます。このとき別紙様式33に準じて評価を行い、その結果と決定した治療方針を診療録に記載することが要件です。
2つ目は、薬を変えた前後の記録。 算定は月1回ですが、抗精神病薬を増減した前後でDIEPSSを付けておくと、どの変更でどの症状が動いたかが残ります。算定の要件と、記録として残す価値は別に考えるのが実務的です。
9項目の構成
DIEPSSは、個別症状8項目と、全体をまとめた概括重症度1項目からできています。
| 番号 | 項目 | 何を見るか |
|---|---|---|
| 1 | 歩行 | 歩幅・腕の振り・前傾など |
| 2 | 動作緩慢 | 動作の遅さ・少なさ |
| 3 | 流涎 | よだれ |
| 4 | 筋強剛 | 関節を他動的に動かしたときの抵抗 |
| 5 | 振戦 | ふるえ |
| 6 | アカシジア | じっとしていられない感じと動き |
| 7 | ジストニア | 持続的な筋の収縮による姿勢の異常 |
| 8 | ジスキネジア | 不随意の運動 |
| 9 | 概括重症度 | 1〜8を踏まえた全体の重さ |
各項目は段階で評価し、点数が高いほどその症状が重いことを表します。個別症状の8項目は、面接での観察と、歩行や筋強剛のような実際に動いてもらう・触れて確かめる手技を組み合わせて付けます。DIEPSSに評価トレーニングが用意されているのは、この手技の部分を揃えるためです。
AIMSとの使い分け ― 遅発性ジスキネジア
AIMS(Abnormal Involuntary Movement Scale/異常不随意運動評価尺度)は、1976年に米国国立精神衛生研究所(NIMH)が公表した尺度で、異常不随意運動、特に遅発性ジスキネジアを部位ごとに見るために使われます。
| DIEPSS | AIMS | |
|---|---|---|
| 対象 | 錐体外路症状の全体(パーキンソン症状・アカシジア・ジストニア・ジスキネジア) | 異常不随意運動(主に遅発性ジスキネジア) |
| 構成 | 個別症状8+概括1 | 部位ごとの運動の項目に、全体評価と歯の状態の項目を加えた構成 |
| 開発 | 稲田俊也、1994年 | NIMH(Guy)、1976年 |
| 診療報酬との接点 | 特定薬剤副作用評価加算の要件 | 名指しの要件はない |
DIEPSSの8「ジスキネジア」は1項目でジスキネジア全体を見ますが、AIMSは顔面・口部、四肢、体幹と部位を分けて見ます。ジスキネジアが疑われる患者さんではDIEPSSにAIMSを加える、という使い方が一般的です。なお、遅発性ジスキネジアの治療薬について「AIMSの点数による投与開始の目安はない」と製薬企業が明記しているとおり、AIMSの点数はそれだけで何かを決める数字ではありません。
診療録に何を残すか ― 加算の要件と、記録の穴
特定薬剤副作用評価加算の要件は、尺度で評価したことと、その結果と決めた治療方針を診療録に記載したことの2つです。ここで実務では3つの問題が起きます。
点数だけが残って、治療方針が残らない。 「DIEPSS 合計6」と書いてあっても、それを受けて薬をどうしたのかが書かれていないと、加算の要件を満たしません。評価と方針は同じ日の診療録に、並べて残します。
前回の点数に引っ張られる。 錐体外路症状は薬の変更で動きます。前回の評価表を見ながら付けると、動いたはずの項目が動かなくなります。付けるときは前回を見ず、付け終わってから比べる順番が要ります。
本文と点数が食い違う。 診療録の本文には「手のふるえは目立たなくなった」とあるのに、振戦の点が前回と同じ、という記録は、本文と点数を別の場所・別のタイミングで書くと起きます。
MENTRAでは、尺度をどう記録に置いているか
MENTRAの看護記録では、GAFの入力欄を記録を書く流れの中に置き、その日の会話から作った目安の値と、看護師の方が確定した値、根拠の1行を同じ画面に残しています(看護記録にGAF尺度を追加しました)。別の紙に転記する作業を作らず、数字と根拠が同じ場所に並ぶようにするためです。
DIEPSSのように診療報酬の要件に直結する尺度では、評価の結果と治療方針が同じ診療録に残ること、月1回の算定日と評価日が対応していることが、記録の側で担保できると確認の手間が減ります。貴院で使っている尺度や様式に合わせて記録の欄を組めるかは、個別に検討してご提案しています。AIカルテ・診療記録の仕組みとあわせて、お気軽にご相談ください。
参考
- 一般社団法人 日本精神科評価尺度研究会「DIEPSS」(9項目の構成・1994年・稲田俊也・トレーニング教材)
- 今日の臨床サポート「I002 通院・在宅精神療法」(注5 特定薬剤副作用評価加算 25点の告示・通知の文言)
- 田辺三菱製薬 医療関係者向け情報「AIMSによるジスバルの投与基準(投与開始の目安)は?」(AIMSの位置づけ。点数による投与開始の目安はないこと)
よくあるご質問
DIEPSSは誰が付けるものですか
抗精神病薬を服用中の患者さんを診察する医師が付けます。特定薬剤副作用評価加算では、精神保健指定医またはこれに準ずる者が評価することが要件です。研究会が評価トレーニングのDVDと講習会を提供しています。
特定薬剤副作用評価加算の要件は何ですか
抗精神病薬を服用中の患者さんについて、通常の副作用確認に加えて薬原性錐体外路症状評価尺度を用いて定量的・客観的に評価し、そのうえで薬物療法の治療方針を決めた場合に、月1回25点を算定できます。別紙様式33に準じて評価し、結果と決めた治療方針を診療録に記載します。
AIMSとはどう使い分けますか
DIEPSSは錐体外路症状を8つの症状ごとに幅広く見る尺度で、加算の要件にもなっています。AIMSは異常不随意運動、特に遅発性ジスキネジアを部位ごとに詳しく見る尺度です。ジスキネジアが疑われるときにAIMSを加える、という使い方が一般的です。
月1回しか算定できないのに、毎回付ける意味はありますか
算定は月1回ですが、評価は薬を変えた前後で付けておくと、どの変更でどの症状が動いたかが残ります。算定の要件と、記録として残す価値は別に考えるのが実務的です。
