テックブログ
精神科の問診を、途中でやめて後から続けられるようにする
目次
精神科の初診の問診票は、体調が悪い状態で書かれます。 眠れていない、集中が続かない、不安が強い。そういう状態で20ページ近い設問に向かうことになります。
一度に最後まで書ききれることを前提にした作りは、この現実に合っていません。途中でやめられて、後から続けられる必要があります。
途中でやめられないと、何が起きるか
書ききれなかった問診は、そのまま失われます。患者さんは来院時に紙で書き直すか、診察室で口頭で答えることになります。事前に問診を出した意味がなくなります。
さらに悪いのは、患者さんの側に「またあれを最初から書くのか」という負担感が残ることです。次の機会に問診を出しても、開かれなくなります。
ログインしない仕組みで、どうやって続きを開くのか
ここが設計上の難所でした。MENTRAの問診は、患者さんにアプリのインストールもアカウント登録も求めません。 URLかQRコードから入って、そのまま答えていただく形です。
登録がないということは、「あなたが先ほどの人だ」と確かめる手段がないということです。ログインがあるサービスなら「ログインすれば続きが出る」で済みますが、この前提を捨てたところから始まります。
かといって、誰でも他人の書きかけを開けてしまうのは論外です。診療情報として扱うべきものが入っています。
6桁の番号で再開する
MENTRAが選んだのは、再開用の6桁の番号を発行する方式です。中断したときに番号が表示され、次に開くときにその番号を入れると続きから始まります。
この方式にしたのは、次の理由からです。
- 患者さんが覚えられる・書き留められる長さである
- 端末をまたげる。 スマートフォンで書き始めて、家族のタブレットで続きを書ける
- アカウントを作らせない。 個人情報をさらに預かることにならない
長い文字列やリンクを送る方式も検討しましたが、メールアドレスを持たない方が使えなくなるため採りませんでした。問診の基本情報でメールアドレスと電話番号を任意にしているのと、同じ考え方です。
| 再開のさせ方 | 患者さんに求めること | 判断 |
|---|---|---|
| アカウントを作ってログインする | インストール・登録・パスワードの管理 | 採らない。問診のためだけに、預かる個人情報が増える |
| 続きのリンクをメールで送る | メールアドレスの登録と受信 | 採らない。メールアドレスをお持ちでない方が使えなくなる |
| 再開用の6桁の番号を出す | 中断のときに表示される番号を控えること | 採用。覚えられる長さで、端末をまたいで続きを開ける |
書きかけを、診療記録と同じ扱いにしない
もうひとつ決めたのが、書きかけの扱いです。
送信前の入力途中の問診は、診療記録とは区別して保管します。そして、送信が完了したとき、または最大7日で自動的に完全削除します。書きかけのまま放置されたものを、システムの中に溜め込みません。
これは容量の話ではなく、預かる情報を必要以上に持たないという方針です。問診が完了すれば書きかけは役目を終えますし、7日たって戻ってこなかったものは、患者さんが再開する意思を持っていないものとして扱います。
「中断できる」を、機能として見せない
実装のうえで気をつけたのは、中断を特別な操作にしないことです。「保存する」ボタンを押させて、「番号を控えてください」と説明して、という作りにすると、それ自体が覚えることになります。
MENTRAでは入力が自動で保存されるので、患者さんはそのまま閉じてよい形にしています。番号は中断のときに表示されるだけです。
利用者の負担を減らすための機能が、新しい手順を増やしてしまうことはよくあります。操作が1つ増えることの重さは、それを毎回する人にとっては「たった1つ」ではありません。ここは設計の判断として、増やさない側に倒しています。
患者さんの側の設計は、商談では見えにくい
問診の使いやすさは、導入を検討される段階では確かめにくい部分です。実際に患者さんが使ってみて初めて、離脱の多さや問い合わせの数として表れます。
AI問診に仕組みをまとめています。いまお使いの問診票をそのまま再現できるか、設問の分岐をどう組めるかは、実物をお見せいただければ具体的にお答えできます。まずは現状の問診票を見せていただくところからで構いません。
