テックブログ

精神科の問診票デジタル化 ― 回答をAIが要約して診察前に届くまで

目次
  1. 紙の問診票は、どこで手間が生まれているのか
  2. 問診票のデジタル化には、どんなやり方があるのか
  3. 紙の項目を、漏らさずWeb問診へ移すには
  4. 書いてもらった回答は、診察前にどこへ届くのか
  5. 紙と併用しながら移るには、どうすればよいのか
  6. PHQ-9・GAD-7 などの質問票も、問診に組み込めるのか
  7. 導入は、どんな順番で進むのか

精神科・心療内科の問診票デジタル化は、紙をスマホの画面に置き換えるだけでは半分しか終わりません。紙の問診票でいちばん時間がかかっているのは、患者さんが書く時間よりも、書かれたものを職員と医師が読み、写し、探す時間だからです。

この記事では、紙の問診票をWeb問診へ移すときの段取りと、移したあとで書いてもらった回答が診察の前にどこへ届くのかを、実際に医療機関のご依頼で紙の初診問診票を取り込んだときの手順に沿ってご説明します。精神科の問診で何を聞くかという項目の話は精神科の初診問診票は、何を聞くのかに、Web問診の比べ方は精神科・心療内科のWeb問診の選び方にまとめています。

紙の問診票は、どこで手間が生まれているのか

紙の問診票の手間は、記入の場面より後ろに多く潜んでいます。待合で書いてもらった1枚は、受付で回収され、読み取られ、電子カルテや台帳に写され、綴じて保管されます。再診のたびに同じことを繰り返し、様式を変えるときは刷り直しです。

工程ごとに並べると、Webに移したときにどこが軽くなるかが見えます。

工程 紙の問診票 Web問診
記入 待合でクリップボードに挟んで書く。書き直しは二重線 来院前に自宅のスマホで答える。条件に合う設問だけが出る
読み取り 手書きの癖や空欄を読み解く 文字で届く。必ず答える欄は送信の前に埋まっている
転記 電子カルテや台帳へ職員が打ち直す AIの要約とカルテに貼れる文章ができている
保管 紙を綴じる、またはスキャンして保存する 患者さんごとに記録の側に残る
再診 毎回同じ用紙を白紙から書く 再診用の短い様式に切り替わる
様式の変更 刷り直しと、古い用紙の回収 掲示したQRはそのまま、中身だけが新しくなる

表の右側で、人の手が残るのは「記入」だけです。Web問診のメリットは、記入の速さよりも、読み取り・転記・保管が丸ごと減ることにあります。逆に言えば、回答が届いたあとの流れが紙のころと変わらないなら、デジタル化の効き目は小さくなります。

問診票のデジタル化には、どんなやり方があるのか

大きく3つのやり方があります。Web問診のメリットとデメリットは、どのやり方を選ぶかでほとんど決まります。

やり方 向いている医療機関 手間が残るところ
紙をPDFにする・スキャンして保存する 保管の場所を減らしたい 記入・読み取り・転記は紙のころのまま
汎用のフォーム作成ツールで作る 項目が少なく、分岐が要らない 条件で出し分ける設問、途中保存、カルテへの渡し方を自分たちで組む
精神科・心療内科向けのWeb問診を使う 初診で生活歴や家族歴まで広く聞く 最初に紙の様式と突き合わせる1回

精神科の初診問診は、他の科より項目が多く、答えによって次に聞くことが変わります。在学中の方には学年を、ご結婚されている方には結婚の回数を聞く、という具合です。汎用のフォームでこれを組むと、条件の数だけ手作業が増えます。

ネットで配られている精神科の問診票のテンプレートを出発点にする方法もあります。ただ、多くの医療機関にはすでに長年使ってきた紙の様式があり、診察室の聞き方もそれに合わせて育っています。いちばん無理のない出発点は、いま使っている紙の問診票です。

AI問診とWeb問診の違いもよく聞かれます。質問の画面そのものは同じで、違いは回答が届いたあとにあります。回答をそのまま並べて見せるのがWeb問診、回答を読みやすい要約にして診察の前に届けるところまで受け持つのがAI問診、と考えると分かりやすいと思います。

紙の項目を、漏らさずWeb問診へ移すには

ここからは、医療機関のご依頼で、紙の初診問診票の項目をMENTRAのWeb初診問診へ取り込んだときの手順です(紙の問診票の項目を、Web問診へ取り込みました)。

手順1 手順2 手順3 手順4 紙の問診票を読む 赤・青・黒の色分け 32行の対応表 1つずつ行に起こす 既存と突き合わせる 2回聞かないように 足りない分を足す 条件で出し分ける
移す前に表にする。表にしておくと、どの項目がどこへ行ったかを医療機関と1行ずつ確かめられる。

お預かりした紙の問診票は、必ず書いてもらう要素が赤、書ければ書いてもらう要素が青で色分けされていました。この赤と青の要素を1つずつ行に起こし、32行の対応表にしました。行ごとに「Webのどの設問に当たるか」「すでにあるか、足すか」「どんな条件で出すか」を書き込み、1行ずつ移していきます。

移すときに決めたことは4つです。

  • 同じことを2回聞かない。Webの問診にすでにある項目は足さず、既存の設問で受け止めました。黒で書かれた項目も、今回は足していません
  • 必ず答える文字の欄には「わからない」を用意する。家族の生年のように思い出せない項目で、患者さんが先へ進めなくなるのを防ぎます
  • 条件に合う方にだけ出す。在学中の方には学年、ご結婚されている方には結婚の回数、ご存命の家族には同居かどうか、40歳以上の方にはこの1年の健診、という形です
  • 人数が決まらない項目はカードにする。ご家族、これまでのお仕事、血縁の方のご病気は、1人(1件)ずつカードを足していく形にし、人数に合わせて増えたり減ったりします

その結果、初診問診の設問は110から133になりました。新しく加えたのは23問です。

初診問診の設問の数 見直す前 見直した後 110問 +23 133問 もとからあった設問 紙の問診票から加えた設問
紙の赤・青の要素を32行の表にして移した結果、新しく足した設問は23問。同じことを聞く設問は、すでにあるものを使っている。

足した項目を、分野ごとに並べるとこうなります。

分野 加えた項目 出し方の工夫
生活歴 出生地/主な生育地/最終学歴と、卒業・中退・在学中/きょうだいの人数と何番目か 在学中の方にだけ学年を聞く
結婚 結婚の回数 ご結婚されている方にだけ出す
お仕事 これまでのお仕事(最大5件) 1件ずつカードを足す
ご家族 父・母・きょうだい・配偶者・お子さんの、存命か・同居か・生年・年齢・職業・健康状態 カードで人数に合わせる。ご存命の方にだけ同居を聞く
血縁の方のご病気 精神科・心療内科のご病気(最大5人) 1人ずつカードを足す
既往のご病気 ご病気ごとの病院名と、いま治療中か ご病気ごとに病院名を添える
制度・保険 生活保護の担当の区/障害支援区分/マイナ保険証の同意 職員の画面では基本情報欄に入る
健診 この1年の健診 40歳以上の方にだけ出す

書いてもらった回答は、診察前にどこへ届くのか

ここがデジタル化の本題です。紙のころは「回収した用紙を医師の机に置く」で終わっていた流れが、Webでは次のように変わります。

患者さんの回答 スマホから送信 問診回答の画面 家族は1人1行 基本情報欄 区分・担当の区・同意 AIの要約 6つの見出し 注目の印 AIとルールの2層 カルテに貼る文章 全文をコピー 診察の前に読む 開けばそろっている
回答は1か所に置かれるのではなく、読む人と使い道に合わせて形を変えて届く。

回答が届くと、まず担当の方にメールでお知らせします。回答のたびに送る形と、毎朝8時にまとめて送る形を選べて、メールの本文には回答の中身を載せません。

職員の画面では、問診の回答が設問の順に並びます。ご家族やこれまでのお仕事のようにカードで答えてもらった項目は、1人1行、1件1行で読めるように整えています。紙では欄外にまで書き込まれがちだった家族の情報が、表のように並びます。

要約のタブを開くと、AIの要約が自動で作られます。見出しは6つです。

見出し 書かれること
【要点】 診察の前に最初に読む結論を、1〜2文で
【本文】 睡眠・食事・活動・服薬・生活の背景を、回答にある範囲で
【生活歴】 生まれ育った場所、最後に通った学校、これまでのお仕事、結婚の回数
【家族歴】 ご家族の存命・同居・年齢・職業・健康状態と、血縁の方のご病気。誰のことかを必ず書く
【確認したい点】 診察で詳しく聞きたい点を、1項目ずつ
【留意点】 副作用や経過で気をつけたい点を、1項目ずつ

【生活歴】と【家族歴】は、今回の紙の項目に答えた初診の回答で作られる見出しです。回答に書かれていないことは書かず、答えが無い欄は「問診に記載なし」と残ります。要約は作り直すことも、手で直すこともでき、全文をコピーしてそのままカルテに貼れます。

もう1つ大事なのが、注意して見たい回答に付く印です。死にたい気持ちに触れた回答など、診察の前に必ず目に入ってほしい回答には、要約とは別に印が付きます。この印はAIが挙げるだけでなく、AIとは別に決まった規則でも拾っています。家族の欄に書かれた出来事は、ご本人のこととは分けて「誰のことか」を添えて扱います。

障害支援区分、生活保護の担当の区、マイナ保険証の同意は、要約の文章ではなく基本情報欄に入ります。文章の中から探さなくても、決まった場所で確かめられるようにしています。

紙と併用しながら移るには、どうすればよいのか

どの医療機関でも、全員が初日からWebで答えられるわけではありません。高齢者の方、スマホを持っていない方、体調が悪くて画面を見るのがつらい方もいらっしゃいます。Web問診と紙を併用しながら、少しずつ移るのが現実的です。

初診と再診では、答える量がこれだけ違います。

初診と再診の設問の数 初診 再診 133問・21ページ 28問・8ページ
2回目からは短い様式に切り替わる。長いのは初診の1回だけで、途中で止めても続きから戻れる。

初診は項目が多いぶん、1回で答え切れなくても困らない作りにしています。いまの仕組みでできることと、これから対応することを並べます。

場面 いまの仕組み これから対応すること
スマホに慣れていない ご家族の端末から一緒に入力できる。アプリもログインも要らない 院内のタブレットでの受付、文字の拡大に対応します
途中で疲れてしまう 1問ごとに自動で保存。診察券番号か再開番号で続きから再開できる。送信しないまま7日たつと自動で消える ―
どこから答えるか分からない 待合に掲示したQR、または案内のURLから開くだけ LINEでの問診のご案内やお知らせに対応します(回答の中身は送りません)
紙で書きたい方がいる 紙の問診票はそのまま受け付け、Webで答えられる方から移っていく 問診の印刷とPDFでの出力に対応します
日本語が得意でない方 ご家族や通訳の方と一緒に答えられる 多言語の問診に対応します
関係のない方に開かれたくない 問診のURLにパスワードをかけられる ―

途中保存の仕組みは問診の途中保存で詳しく書いています。2回目からは再診の様式になり、前回からの変化を中心に聞くので、答える量は大きく減ります。追加受診のための案内を出すこともできます。

PHQ-9・GAD-7 などの質問票も、問診に組み込めるのか

組み込めます。精神科・心療内科では、問診と一緒に自記式の質問票を付けてもらうことがよくあります。紙では別の用紙になりがちですが、Web問診なら同じ流れの中で答えてもらえます。

組み込むことの多い質問票を並べます。項目の文章は転載せず、構造だけを示します。

質問票 何を見るか 項目・点の範囲(振り返る期間) 組み込むときの確認
PHQ-9 抑うつの症状 9項目・0〜27点(過去2週間) 英語版は原著者らが公開。日本語版は村松らの作成で、使用条件を確かめる
GAD-7 不安の症状 7項目・0〜21点(過去2週間) PHQ-9と同じ
K6 こころの負担の全体 6項目・0〜24点(過去30日) 日本語版は古川らの作成。国民生活基礎調査でも使われている
AUDIT 飲酒の習慣 10項目・0〜40点(過去1年) WHOが手引きとあわせて公開
ASRS-v1.1 大人のADHDの特性 18項目(前半6項目がパートA)(過去6か月) WHOと原著者らが公開。日本語版の出所を確かめる
AQ 自閉スペクトラムの特性 50項目・0〜50点(期間の区切りなし) 日本語版は若林らの作成。使用条件を確かめる
EPDS 産後の抑うつ 10項目・0〜30点(過去7日) 日本語版は岡野らの作成
CES-D 抑うつの症状 20項目・0〜60点(過去1週間) 日本語版は島らの作成。正規の用紙の入手方法を確かめる
AIS 眠りの状態 8項目・0〜24点(過去1か月) 原著はSoldatosら。日本語版の出所を確かめる

組み込むときは、合計点の自動計算と、前回の点数との比較を、AIの要約と職員の画面に並べる形で作ります。点数で線を引くことより、同じ方の点数が前回からどう動いたかを追えることのほうが、診察の役に立つからです。PHQ-9の9問目のように、合計点とは別に先に目に入ってほしい項目は、注目の印と同じ2層で拾う形にします。

使い方の詳しい話はPHQ-9とGAD-7の使い方に、精神科で使う尺度の全体は精神科の評価尺度の一覧にまとめています。

導入は、どんな順番で進むのか

紙の問診票をお預かりするところから始まります。医療機関の側で新しく用意していただくものは、ほとんどありません。

段階1 段階2 段階3 段階4 段階5 ご相談 いまの様式から 紙をお預かり 赤・青・黒を読む 対応表で確認 1行ずつ合意 試験運用 紙と並べて使う 切り替え QRを待合に掲示
いちばん時間をかけるのは3つ目の対応表。ここで合意できていれば、切り替えの日に迷うことはほとんどない。

導入のご相談の中で、医療機関ごとに作り込めることを並べます。

ご相談いただけること 内容
設問の作り込み 貴院の問診票に合わせて、設問・選択肢・言い回し・順番まで作り込みます
質問票の組み込み PHQ-9・GAD-7などを問診に組み込み、合計点と前回との比較を要約に並べます
電子カルテへの渡し方 貴院の電子カルテに合わせて、どの欄へどう渡すかを一緒に決めます
院内での受付 院内のタブレットでの受付と、文字の拡大に対応します
紙での控え 問診の印刷とPDFでの出力に対応します
ご案内とお知らせ LINEでの問診のご案内とお知らせに対応します。回答の中身は送りません
外国語での回答 多言語の問診に対応します

待合で問診票を配って回収し、読みにくい字を読み解き、家族歴を電子カルテへ打ち直し、再診のたびに同じ用紙を渡す。どこかに心当たりがあれば、そこはWebに移すだけで減らせる手間です。私たちは実際に、医療機関からお預かりした紙の初診問診票を32行の対応表に起こし、1つずつWeb問診へ移しました。次は貴院の問診票で同じことができます。AI問診に仕組みをまとめていますので、あわせてご覧ください。いまお使いの紙の問診票を見せていただくだけでも歓迎です。どこまでそのまま移せるかを具体的にお答えしますので、お気軽にご相談ください。

よくあるご質問

紙の問診票と、しばらく併用できますか

できます。受付で「スマホで答えられる方はQRから、難しい方は紙で」と分けるだけで始められます。切り替えの時期は、Webで答える方の割合を見ながら決めれば十分です。

自院の問診票の設問や言い回しを、そのまま使えますか

使えます。いまお使いの紙の問診票をお預かりして、設問ごとに対応表を作り、言い回しや選択肢まで貴院の様式に合わせて作り込みます。診察室で使い慣れた順番や言葉を残したほうが、読む側も迷いません。

電子カルテには、どうやって渡すのですか

いまはAIの要約とカルテに貼れる文章を全文コピーして、電子カルテへ貼り付ける形です。貴院の電子カルテの種類や院内の運用に合わせて、どの欄にどう渡すのがいちばん手間が少ないかを、導入のご相談の中で一緒に決めます。電子カルテ連携の進め方もご相談ください。

費用はどのくらいかかりますか

料金の目安はサイトの料金のページにまとめています。問診票の作り込みの量や、質問票の組み込み、電子カルテへの渡し方によって変わるので、いまの紙の問診票を拝見したうえでお見積もりします。まず現状を見せていただくだけでも構いません。

↑ このページの先頭へ

まずは、30分だけ話を聞かせてください。

今の記録の流れを伺うところからで大丈夫です。資料の準備は不要です。

精神科病院からメンタルクリニックまで、規模を問わず。院内の運用に合わせた調整もご相談ください。