テックブログ

PHQ-9・GAD-7の点数とカットオフ ― 日本語版の帯・判定・使用条件

目次
  1. 点数の早見表 ― 日本語版の帯とカットオフ
  2. どこで使うのか ― 問診の中に置く
  3. PHQ-9 ― 9項目・0〜27点
  4. 合計点とは別の読み方 ― 日本語版の判定
  5. 日本語版で確かめられた数字
  6. GAD-7 ― 7項目・0〜21点
  7. 付けてもらうときの原則
  8. 記録に残すとき、何が起きるか
  9. 使用条件 ― 様式に書かれていること
  10. MENTRAでは、問診と記録をどうつないでいるか

PHQ-9(Patient Health Questionnaire-9)とGAD-7(Generalized Anxiety Disorder-7)は、どちらも患者さん自身が過去2週間についての質問に答える自己記入式の尺度です。PHQ-9は抑うつの症状を9項目で、GAD-7は不安の症状を7項目で、それぞれ0〜3点で尋ねます。PHQ-9は2001年にKroenke、Spitzer、Williamsが、GAD-7は2006年にSpitzerらが発表し、日本語版は村松らが作成しました。

面接者が付けるHAM-DやMADRSと違って、患者さんが自分で付けるので、待合や問診の中で付けてもらえるのが特徴です。この記事では、2つの尺度の点数の帯とカットオフ、日本語版の読み方と使用条件、そして本人の点数を記録に残すときに起きる問題を整理します。

点数の早見表 ― 日本語版の帯とカットオフ

PHQ-9 日本語版(2018) GAD-7 日本語版(2025)
項目と点 9項目 × 0〜3点 7項目 × 0〜3点
合計の範囲 0〜27点 0〜21点
評価期間 この2週間 この2週間
0〜4点 軽微 軽微
5〜9点 軽度 軽度
10〜14点 中等度 中等度
15〜19点 中等度〜重度 重度(15〜21点)
20〜27点 重度 ―
よく使われるカットオフ 10点以上 10点以上で全般性不安障害の疑い

帯の呼び名は日本語版の様式に書かれているものです(PHQ-9 日本語版(2018)/GAD-7 日本語版(2025))。各項目は「全くない(0)」「数日(1)」「半分以上(2)」「ほとんど毎日(3)」で付けます。

どこで使うのか ― 問診の中に置く

PHQ-9は、診療報酬では「B005-12 こころの連携指導料(Ⅰ)」の対象となる患者を見つけるスクリーニングの例として、EPDS・K-6などと並んで名前が挙がっています(令和8年度の留意事項通知 B005-12 (1))。GAD-7は通知に名前が出てきません。臨床で使われる場面は主に3つです。

  • 初診の問診 — 主訴とは別に、抑うつと不安の症状の程度を数字で持っておくとき
  • 再診の経過 — 数週間ごとに同じ質問に答えてもらい、本人の実感の変化を追うとき
  • 面接者評価との組み合わせ — 本人の点数と、面接者が付けたHAM-DやMADRSを並べて、実感と見立ての差を見るとき

自己記入式なので、医療者の時間を使わずに付けられます。裏返すと、付けてもらった点数を誰がいつ見るのかを決めておかないと、問診票の中に埋もれます。

PHQ-9 ― 9項目・0〜27点

PHQ-9は、過去2週間に次のような症状がどのくらいの頻度であったかを、9項目それぞれ0〜3点で答えてもらいます。項目は、興味や楽しみの減退、気分の落ち込み、睡眠、疲れやすさ、食欲、自分を責める気持ち、集中のしにくさ、動作や話し方の変化、そして死や自傷についての考えの9つです。日本語版の様式では、質問にAからIの記号が振られていて、9問目は質問Iにあたります。

合計10点以上を一つの区切りに置くことが多く、日本語版を使った緩和ケア領域の報告でも10点以上を抑うつありの目安にしています。

合計点とは別の読み方 ― 日本語版の判定

PHQ-9 日本語版の様式には、合計点とは別にチェックの数で読む方法が示されています。

何を数えるか 読み方
質問A〜Hのうち「半分以上」「ほとんど毎日」が5つ以上(うち1つは質問AかB) 大うつ病性障害
同じく2〜4つ(うち1つは質問AかB) その他のうつ病性障害
最下段の質問(仕事・家事・人づきあいの困難さ) 生活機能全般の困難度

躁病エピソードの既往、身体疾患、薬物に伴うものを除いて評価する、という前提も様式に書かれています。数え方の細かな決まりは、様式の「使用方法」で確かめてください。

日本語版で確かめられた数字

日本のプライマリケアで行われた検証(Muramatsu ら、2018年・284人、うち大うつ病性障害93人)では、次の値が報告されています。

読み方 感度 特異度
合計10点以上 90.5% 76.6%
チェックの数による判定 80.6% 89.5%

合計点は取りこぼしが少なく、チェックの数は当てはまりすぎが少ない、という性格の違いがあります。どちらの読み方を使ったかを点数と一緒に残しておくと、次に読む人が同じ読み方で比べられます。

🔴 9問目(質問I)は別扱いにします。 死や自傷についての考えを尋ねる項目なので、ここに1点以上が付いたときは、合計点が低くてもその日のうちに面接で直接確かめる運用が要ります。問診票を受付で回収して診察の順番を待つ、という流れの中で、9問目だけは先に医療者へ届く経路を作っておきます。

GAD-7 ― 7項目・0〜21点

GAD-7は、過去2週間に不安や心配に関する7つの症状がどのくらいの頻度であったかを、PHQ-9と同じ0〜3点で答えてもらいます。項目は、神経質・不安・緊張、心配を止められないこと、いろいろなことを心配しすぎること、くつろげないこと、落ち着かず座っていられないこと、いらいら、そして何か恐ろしいことが起きそうな感じ、の7つです。

日本語版の様式は、合計10点以上で全般性不安障害の疑い、としています(帯は冒頭の早見表)。原著では、合計10点をカットオフにしたとき、全般不安症に対して感度89%・特異度82%と報告されています。PHQ-9と組み合わせて使われることが多く、両方で同じ「0〜4/5〜9/10〜14/15以上」の区切りを使えるので、並べて読みやすい構成です。

付けてもらうときの原則

同じ条件で付けてもらうことが、経過を追うときの前提です。初診は待合で、再診は診察室で医師の前で、という付け方が混ざると、点数の意味が変わります。特に9問目は、医療者の前だと低く付ける患者さんがいます。

回答のもれを確かめることも要ります。自己記入式なので、1項目でも空欄があると合計が出ません。回収時に空欄を確かめ、あれば本人に聞いて埋めてもらいます。

本人の実感として扱う。 PHQ-9とGAD-7の点数は、面接者の見立てではなく本人の実感です。面接者が付けたHAM-Dが14点で、本人のPHQ-9が6点、というずれは実際にあります。ずれていること自体が、面接で聞くべきことを教えてくれます。

記録に残すとき、何が起きるか

自己記入式の尺度は、記録の段階で他者評価の尺度とは違う問題が起きます。

問診票の中に埋もれる。 紙の問診票で付けてもらい、その紙が診療録に綴じられるだけだと、合計点も質問Iも、次に読む人の目に入りません。合計点と評価日を記録の本文と同じ場所に残す必要があります。

前回の点数と並ばない。 経過を追う尺度なのに、前回のPHQ-9が別の紙にあると、比べるためにめくる作業が要ります。数週間ごとの点数が一列に並んでいれば、帯をまたいだかどうかは一目で分かります。

本人の点数と面接者の見立てが別の場所にある。 本人のPHQ-9と面接者のHAM-Dを同じ画面に並べておくと、ずれがそのまま見えます。別の場所にあると、ずれに気づくのは偶然になります。

使用条件 ― 様式に書かれていること

PHQ-9 日本語版(2018)と GAD-7 日本語版(2025)の様式には、どちらも著作権表示(©kumiko.muramatsu)とともに、「無断転載・改変・電子媒体への使用を禁止します」と書かれています。

使い方 様式に照らすと
印刷した様式をそのまま使う 様式どおりの使い方
質問の言い回しを院内で変える 改変にあたる
電子カルテのテンプレートや Web 問診に質問文を入れる 電子媒体への使用にあたる。権利者の許諾を確かめてから
合計点・評価日・質問Iの値を記録に書く 結果の記録であり、質問文の転載ではない

英語版は原著者らが公開していますが、日本語の質問文を使うときは日本語版の条件が効きます。研究で使う場合に翻訳権者の許可を得たという報告もあります。院内でデジタル化を進めるときは、質問文を載せる前に許諾の有無を確かめる、が順番です。

MENTRAでは、問診と記録をどうつないでいるか

MENTRAのAI問診は、患者さんがご自身のスマートフォンやタブレットで答えた内容を、診察の前に医療者が読める形に整えます。再診用の問診にも対応していて、前回との違いが分かる形で診察に届きます(再診用の問診に対応しました)。

PHQ-9やGAD-7の結果を経過として追うときは、合計点・評価日・質問Iの値が記録の側に並んでいることが要になります。日本語版の質問文を問診に載せるには権利者の許諾が前提になるので、MENTRAでは、許諾を得ている施設の運用に合わせて問診の項目として置くか、紙で付けた結果を記録に並べる形にするかを、個別に検討してご提案しています。質問Iのように合計点と別に先へ届けたい項目の扱いも、設計の段階で決められます。AI問診の仕組みとあわせて、お気軽にご相談ください。


参考

よくあるご質問

PHQ-9とGAD-7は医療者が付けるものですか

いいえ、患者さん自身が付ける自己記入式です。待合や問診の中で付けてもらい、医療者はその点数を面接の材料にします。面接者が付けるHAM-DやMADRSとは役割が違います。

何点以上なら注意が要りますか

どちらも合計10点以上を一つの目安に置くことが多く、日本語版PHQ-9の検証(Muramatsuら、2018年)では10点以上で感度90.5%・特異度76.6%、GAD-7の原著では10点で感度89%・特異度82%と報告されています。点数は、面接で何を聞くかを決める入口として使います。

PHQ-9の9問目(日本語版の質問I)はどう扱えばよいですか

死や自傷についての考えを尋ねる項目です。ここに1点以上が付いたときは、合計点にかかわらず、その日のうちに面接で直接確かめる運用にしておきます。

日本語版は自由に使えますか

PHQ-9日本語版(2018)とGAD-7日本語版(2025)の様式には「無断転載・改変・電子媒体への使用を禁止します」と明記されています。印刷した様式をそのまま使うのが基本で、Web問診や電子カルテに質問文を載せるときは、権利者の許諾を確かめます。

↑ このページの先頭へ

まずは、30分だけ話を聞かせてください。

今の記録の流れを伺うところからで大丈夫です。資料の準備は不要です。

精神科病院からメンタルクリニックまで、規模を問わず。院内の運用に合わせた調整もご相談ください。