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PANSSとは何か ― 陽性・陰性・総合の30項目と記録の残し方

目次
  1. PANSSは、どこで使われるのか
  2. 30項目の構成
  3. 付け方の原則
  4. 記録に残すとき、何が起きるか
  5. 著作権について、記録の側で気をつけること
  6. MENTRAでは、尺度をどう記録に置いているか

PANSS(Positive and Negative Syndrome Scale/陽性・陰性症状評価尺度)とは、統合失調症の症状を陽性尺度7項目・陰性尺度7項目・総合精神病理尺度16項目の計30項目で、それぞれ1〜7点で付ける評価尺度です。1987年にKayらが発表し、日本語版は1991年に星和書店から刊行されました。統合失調症の臨床試験では最も広く使われている尺度です。

この記事では、PANSSの構成と付け方の原則、そして30項目という多さゆえに記録で起きる問題を整理します。なお、PANSSの項目定義と評価基準の文章には著作権があります。この記事では構造と使い方だけを扱い、定義文は転載しません。

PANSSは、どこで使われるのか

PANSSは診療報酬の要件に名指しで出てくる尺度ではありません。使われる場面は主に次の3つです。

  • 臨床試験 — 抗精神病薬の有効性を示す指標として、国内外の治験でほぼ標準的に使われます
  • 急性期の入院治療 — 入院時と退院時、あるいは薬を変えた前後で症状の全体像を残すとき
  • 陰性症状の評価 — 陽性症状が落ち着いたあとに残る意欲低下や引きこもりを、項目として見るとき

BPRSとの関係で言うと、PANSSの30項目はBPRSの18項目を含み、そこに陰性症状を中心とする12項目を加えた構成です。BPRSが「疾患を限定せず全体を短時間で」、PANSSが「統合失調症の症状構造を詳しく」という使い分けになります。

30項目の構成

尺度 項目数 項目 合計点の範囲
陽性尺度(P) 7 妄想/概念の統合障害/幻覚による行動/興奮/誇大性/猜疑心・迫害感/敵意 7〜49
陰性尺度(N) 7 情動の平板化/情動的引きこもり/疎通性の障害/受動性・意欲低下による社会的引きこもり/抽象的思考の困難/会話の自発性と流暢さの欠如/常同的思考 7〜49
総合精神病理尺度(G) 16 心気症/不安/罪責感/緊張/衒奇症と不自然な姿勢/抑うつ/運動減退/非協調性/不自然な思考内容/失見当識/注意の障害/判断力と病識の欠如/意志の障害/衝動性の調節障害/没入性/自主的な社会回避 16〜112
合計 30 30〜210

各項目は1(なし)から7(最重度)の7段階です。BPRSと同じく、「症状なし」が0ではなく1である点に注意が要ります。30項目すべてが1点でも合計は30点です。

点 段階
1 なし
2 ごく軽度
3 軽度
4 中等度
5 やや重度
6 重度
7 最重度

付け方の原則

評価期間は過去1週間が基本です。PANSSは半構造化面接(SCI-PANSS)の手順が定められていて、面接の中で得られる患者さんの話と様子、それに看護スタッフやご家族からの情報を合わせて評価します。面接だけで30〜40分程度が目安です。

各項目には評価基準(アンカー)が用意されていて、「この状態なら4点」という記述が1点刻みで示されています。評価者はその基準に照らして付けます。BPRSと同様、評価者トレーニングによって評価者間の一致度が上がることが知られています。

一つ気をつけたいのは、陰性尺度は面接の中で観察して付ける項目が多いことです。情動の平板化や会話の自発性は、患者さんに「どうですか」と聞いても答えとして出てきません。面接の間の様子を見ておく必要があります。

記録に残すとき、何が起きるか

30項目を付けたあと、記録に残す段階で起きる問題は、BPRSと同じ3つに、項目数の多さゆえの1つが加わります。

点数だけが残って根拠が残らない。 「PANSS 72」とだけ書かれた記録から、次に読む人は陽性が高いのか陰性が高いのか分かりません。少なくともP・N・Gの3つの合計は分けて残し、動いた項目とその根拠を1行そえるのが最低限です。

前回の点数に引っ張られる。 30項目もあると、前回の評価表を横に置いて「変わっていない項目はそのまま」と付けたくなります。それをすると、動いたはずの項目も動かなくなります。付けるときは前回を見ない、比べるのは付けたあと、という順番は項目が多いほど大事です。

本文と点数が食い違う。 記録の本文には「幻聴の訴えは減っている」とあるのに、P3(幻覚による行動)が前回と同じ5、という食い違いは、本文と点数を別の場所・別のタイミングで書くと起きます。

そして、30項目を毎回書き写す手間。 PANSSの記録が続かない施設の理由は、たいていこれです。評価表が紙で、電子カルテには合計点だけ転記する、という運用になると、項目単位の経過は紙の束の中に埋もれます。

著作権について、記録の側で気をつけること

PANSSの項目定義と評価基準の文章は、権利者が管理しています。日本語版も星和書店の冊子として刊行されているものです。評価するときはその冊子を参照するとして、記録に残すのは項目名と点数、根拠の1行までにしておくのが安全です。定義文を電子カルテのテンプレートに貼り込む運用は、権利の面で確認が要ります。

これはPANSSに限らず、権利者が管理している尺度に共通する扱いです。原著が論文として公開されている尺度(BPRS・HAM-Dなど)とは、記録の作り方が少し違います。

MENTRAでは、尺度をどう記録に置いているか

MENTRAの看護記録では、GAFの入力欄を記録を書く流れの中に置き、その日の会話から作った目安の値と、看護師の方が確定した値、根拠の1行を同じ画面に残しています(看護記録にGAF尺度を追加しました)。別の紙に転記する作業を作らず、数字と根拠が同じ場所に並ぶようにするためです。

PANSSのように項目の多い尺度では、項目ごとの点数を構造化して残しておくことで、P・N・Gの合計も動いた項目も、あとから数え直さずに出せます。項目名と点数だけを記録側に持ち、定義文は権利者の冊子を参照する、という分け方も設計の段階で決められます。貴院で使っている尺度や様式に合わせて記録の欄を組めるかは、個別に検討してご提案しています。AIカルテ・診療記録の仕組みとあわせて、お気軽にご相談ください。


参考

  • 一般社団法人 日本精神科評価尺度研究会「PANSS (Positive and Negative Syndrome Scale) 陽性・陰性症状評価尺度」(30項目の構成・日本語版の出所)
  • 山田寛・増井寛治・菊本弘次(訳)『陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)マニュアル』星和書店、1991年(日本語版)
  • Kay SR, Fiszbein A, Opler LA. The Positive and Negative Syndrome Scale (PANSS) for schizophrenia. Schizophrenia Bulletin 1987; 13(2): 261-276(原著)

よくあるご質問

PANSSとBPRSはどう違いますか

PANSSの30項目にはBPRSの18項目が含まれていて、そこに陰性症状を中心とする12項目が加わっています。統合失調症の陽性・陰性症状の構造を詳しく見るならPANSS、疾患を限定せず短時間で全体を見るならBPRSです。

評価にはどのくらい時間がかかりますか

半構造化面接で30項目を評価するので、面接だけで30〜40分程度が目安です。BPRSより時間がかかるぶん、陰性症状の項目が細かく見られます。

陽性尺度と陰性尺度の差は何を表しますか

陽性尺度の合計から陰性尺度の合計を引いた値で、症状が陽性優位か陰性優位かの目安になります。経過の中でこの符号が変わるときは、治療の焦点が変わったことを意味します。

PANSSの評価表をそのまま電子カルテに貼ってもよいですか

PANSSの項目定義と評価基準の文章には著作権があります。記録に残すのは項目名と点数、根拠の1行までにして、定義文は権利者の許諾を受けた冊子で参照するのが安全です。

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