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精神科の初診の予診を、精神保健福祉士の電話とWeb問診でどう分けるか

目次
  1. 先に、言葉の整理
  2. 精神科の初診で、予診が電話に集まりやすいのはなぜか
  3. ご相談を伺い、これまでとこれからを整理しました
  4. 件数が少なくても、担当を比率どおりに決めるには
  5. 対応漏れを無くすため、状態ごとに「次に誰が拾うか」を決めた
  6. 自院の受付の流れに合わせるには
  7. 参考

精神科・心療内科の初診では、診察の前に困りごとや経過を伺う「予診」を、精神保健福祉士や看護師などが担うことがよくあります。初診の予約を電話で受け、受診の前に聞き取る流れを案内している病院もあります。この記事では、その予診の一部をWeb問診に移すときに、どこを画面に任せ、どこを人の電話に残すかを、病院からのご相談を受けて実際に形にした例で説明します。分け方の決め方、件数が少ない病院でも担当を比率どおりに決める方式、対応漏れを無くすための見張りの3つが中心です。

先に、言葉の整理

言葉 この記事での意味
予診(インテーク) 初めての診察の前に、困りごと・経過・ご希望などを伺うこと。精神科では精神保健福祉士・看護師・心理職などが担うことも多い
精神保健福祉士(PSW) 精神障害のある方などの相談に応じ、暮らしや社会復帰を支える国家資格(精神保健福祉士法)。病院では受診の相談や地域との連携を受け持つ
Web問診 患者さんがスマートフォンなどで答える問診票。答えは診察の前に病院へ届く
受診前の確認 Web問診の前に置く、病院が決めた短い設問。答えでお電話かWeb問診かに分かれる
対応待ち 担当が決まった依頼とお電話待ちの方が並ぶ、職員の画面の一覧
比率 名簿の一人ひとりが受け持つ割合。病院の管理者が決める
乱数 毎回ばらばらに出る数。くじ引きのように担当を決めるときに使う

精神科の初診で、予診が電話に集まりやすいのはなぜか

公立の精神科病院の初診の案内を見ると、初診は電話の予約から始まり、診察の前に聞き取りや面談をする流れが目立ちます。福島県立ふくしま医療センターこころの杜は、精神科一般外来を完全予約制とし、まず電話で症状や相談したいことを伝え、受診前の面談を経て受診日が決まる流れを案内しています(初めての受診希望の方)。香川県立丸亀病院は、初めての方には診察の前にケースワーカーが必要な情報を伺うと案内しています(精神科の案内)。群馬県立精神医療センターも、地域医療連携室を初診の窓口とし、電話で予約を受けて受診の前に症状などを伺っています(地域医療連携室)。

精神科の予診では、困りごとの経過や暮らしの様子、ご家族の事情まで、時間をかけて伺います。現場向けの手引きでも、予診は精神保健福祉士・心理職・看護師などのコメディカルスタッフが担うことが多いと書かれています(田中 2011)。

一方で、伺う時間が長いぶん、予約の受付と聞き取りがお電話に集まり、受付の手が止まりやすくなります(今回ご相談をいただいた病院でも、まずこの点を伺いました)。2025年5月の厚生労働省の検討会に研究者が提出した精神科診療所の調査(速報値)でも、自由記載をまとめた項目に、精神保健福祉士・看護師・公認心理師などの専門職が診察の前に面談すれば「診療の質を確保しつつ診察時間を短縮できる」という声が挙がっています。初診までの待ち日数を減らす対策としては、Web問診や電話相談の段階で来院前に情報を集め、専門職が緊急性を判断する(事前トリアージ)という声もありました(精神科診療所の機能に関する調査)。予診の丁寧さはそのままに、Web問診で足りる部分は画面に移し、お電話の時間を詳しく伺うべき方に使う。今回の設計は、この考え方から始まっています。

これまで これから 初診のお電話 初診のお電話 初診のお電話 精神保健福祉士 聞き取り・担当決め 受付の時間が電話に取られる 設問1 設問2 送る 受診前の確認 お電話で伺う方 Web問診へ進む方 担当は自動で決まる
電話に集まっていた予診のうち、Web問診で足りる部分を画面に移す

ご相談を伺い、これまでとこれからを整理しました

ある精神科の病院から、「初診のご希望をまずお電話で受け、精神保健福祉士が聞き取ってから問診へご案内している。これを最初からWeb問診で始められるようにしたい。担当の漏れも無くしたい」とご相談をいただきました。最初にしたのは、作ることではなく、いまの受付の流れを一つずつ伺うことです。誰が電話を受け、何を聞き、どこで担当を決め、どこに書き留めているか。そのうえで、これまでとこれからを次のように整理しました。

これまで これから
初診のご希望 まず病院へお電話 最初からWeb問診で受け付ける
お電話で詳しく伺う方 電話の中で聞き分ける 病院が決めた確認の設問で、相談室のお電話をご案内
担当決め その都度、相談員どうしで決める 名簿と比率に沿って自動で決まる
対応の状況 各自の手元で把握 対応待ちの一覧を全員で見る
患者さんへのご案内 折り返しを待っていただく 完了画面に担当の名前とお電話の受付時間

整理して見えてきたのは、予診のすべてを画面に移すのではなく、画面で足りる方と、お電話で伺うべき方を分ける入口が要る、ということでした。分け方は、AIに任せていません。たとえば紹介状をお持ちかどうかなど、病院が受診の前に確かめたい設問と、お電話へご案内する答えを、病院の資料のまま画面にしています。誰が答えても同じ答えなら同じ行き先になり、なぜそうなったかを病院が説明できます。精神科の受付で使う以上、行き先の理由を病院が言えることを優先しました。

形にしたあとも、病院からお返事をいただくたびに作り足しました。再診の方も同じ流れに乗せる、担当を変えたときに前後の担当が分かるメールにする、患者さんにお見せする担当の名前を平仮名にできる、といった点で、三度のやりとりを重ねていまの形になっています。

件数が少なくても、担当を比率どおりに決めるには

Web問診へ進んだ方には、名簿と比率に沿って担当の精神保健福祉士を1人決めます。最初に思いつくのは、比率に合わせた乱数で決める方法です。件数が多ければ乱数でも比率に近づきますが、精神科の初診は1つの病院で1日に何十件も来るものではありません。20件で比べると、差ははっきり出ます。

比率 50・30・20 で20件を決めたとき 比率どおり(10・6・4件)になる割合 誰かが3件以上ずれる割合 いちばん大きいずれ(平均)
比率に合わせた乱数(10万回の試算) 4.4% 42.3% 2.4件
目標に最も足りない人を選ぶ 100% 0% 途中も含めて最大0.5件

(比率 50・30・20 は説明のための例です。乱数の行は、同じ条件の試算を10万回繰り返した結果です)

そこで乱数は使わず、次の1件を受け持ったとしたら、目標に対していちばん足りない人を選ぶ形にしました。実際の割り振りの関数の、選ぶ部分だけを抜き出すと次のとおりです。

-- 名簿の比率で担当を1人選ぶ(数え始めから数えた件数 n と、比率 ratio_percent)
SELECT c.hospital_user_id INTO o_hospital_user_id
  FROM counted c
 ORDER BY (c.ratio_percent::numeric * (v_total_n + 1) / v_total_r - c.n) DESC,
          c.sort_order ASC,
          c.hospital_user_id ASC
 LIMIT 1;

並べ替えの式は「次の1件を足した総数のうち、この人が受け持つはずの件数」から「すでに受け持った件数」を引いたもので、これが大きい人ほど足りていません。同じ値なら名簿の並び順で決めるので、同じ状況なら必ず同じ人になります。最初の10件の動きを書き出すと、次のようになります。

件目 Aさん(50%)の足りなさ Bさん(30%) Cさん(20%) 選ばれた人
1 0.5 0.3 0.2 Aさん
2 0.0 0.6 0.4 Bさん
3 0.5 -0.1 0.6 Cさん
4 1.0 0.2 -0.2 Aさん
5 0.5 0.5 0.0 Aさん(同じ値は名簿の順)
6 0.0 0.8 0.2 Bさん
7 0.5 0.1 0.4 Aさん
8 0.0 0.4 0.6 Cさん
9 0.5 0.7 -0.2 Bさん
10 1.0 0.0 0.0 Aさん
目標 乱数で決めた一例 最も足りない人を選ぶ Aさん 10 Bさん 6 C 4 Aさん 13 B 4 C 3 Aさん 10 Bさん 6 C 4 ずれ 3件 ずれ 0件
点線は目標の区切り。件数が少ないほど、乱数のずれは目立つ

上の試算は、次のコードをブラウザの開発者ツールに貼るだけで確かめられます。乱数の行の数字は試すたびに少し変わります。

// 比率 50・30・20 で20件を決める。乱数と「目標に最も足りない人」を比べる
const ratio = [50, 30, 20];
const total = ratio.reduce((a, b) => a + b, 0);

function byDeficit(cases) {
  const n = ratio.map(() => 0);
  for (let k = 0; k < cases; k++) {
    const sum = n.reduce((a, b) => a + b, 0);
    const score = ratio.map((r, i) => (r * (sum + 1)) / total - n[i]);
    n[score.indexOf(Math.max(...score))]++; // 同じ値なら先頭(名簿の順)
  }
  return n;
}

function byRandom(cases) {
  const n = ratio.map(() => 0);
  for (let k = 0; k < cases; k++) {
    let u = Math.random() * total;
    const i = ratio.findIndex((r) => (u -= r) < 0);
    n[i]++;
  }
  return n;
}

console.log('最も足りない人', byDeficit(20)); // [10, 6, 4]
console.log('乱数', byRandom(20)); // 例: [13, 4, 3]

もう1つ決めておく必要があったのが、どこから数えるかです。名簿は日々変わります。お休みの付け外しや並び順の変更のたびに数え直すと、そのたびに「これまでの件数」が消え、比率が少しずつ崩れていきます。そこで数え始めは、比率や人の出入りが最後に変わった時刻に置き、お休みの付け外しでは動かないようにしました。

-- 数え始め=人の出入り・比率が最後に変わった時刻(論理削除した行も含む)
-- 行の更新時刻は使わない。お休み・並び順の変更でも動き、そのたびに数え直して比率が崩れる
SELECT max(r.ratio_changed_at) INTO v_since
  FROM public.psw_roster r
 WHERE r.tenant_id = p_tenant_id;

対応漏れを無くすため、状態ごとに「次に誰が拾うか」を決めた

担当が決まっても、お知らせのメールが届かなければ、依頼は誰にも気づかれずに残ります。対応漏れは、たいてい「途中で止まった依頼を、誰も拾わない」ことで起きます。そこで依頼が取りうる状態を書き出し、どの状態にも次に拾うものを決めました。

どの状態にも、次に拾うものがある 依頼ができる 担当が決まる メールの順番待ち 担当にメールが届く 送り直しつき 担当が決まらない 送り直しても 送れない 見張りが 運用担当へ知らせる
止まった依頼は、黙って残らず、必ずどこかが拾う
依頼の状態 次に拾うもの 拾えなかったとき
担当が決まった お知らせのメールを順番待ちに入れる 見張りが「メールの準備が無い依頼」として知らせる
メールの順番待ち 送る仕組みが順に送り、失敗したら送り直す 長く残っていれば、見張りが知らせる
送り直しても送れない 打ち切って記録に残す 見張りが打ち切りの件数を知らせる
担当が決まらない(名簿が空・全員お休みなど) その場で運用担当へエラーを残す 未対応のまま残っていれば、見張りが毎日知らせる
お電話待ち 対応待ちの一覧に赤い札で出し、名簿の全員にお知らせする 一覧の件数として全員の画面に残る

見張りは、毎日決まった時刻に「止まったまま残っている依頼」を数え、1件でもあれば運用担当へ知らせます。担当が決まらないまま残っている依頼を数える部分は、次のような形です。

-- 担当なしのまま1日を過ぎた未対応(放置されていないかを毎日見る)
SELECT count(*) INTO v_unassigned
  FROM public.psw_followups f
 WHERE f.is_deleted = false AND f.status = 'pending' AND f.kind = 'assigned' AND f.assigned_hospital_user_id IS NULL
   AND f.created_at < now() - interval '1 day';

新しい状態を足したときは、その状態を「次に拾うもの」が無いまま終わらせないことを、設計の確認の決まりにしています。状態が1つ増えるたびに、表に1行足す。それだけで、気づかれない依頼は残らなくなります。

自院の受付の流れに合わせるには

初診のお電話が重なって受付の手が止まる、担当をその日の空き具合で決めている、折り返しの約束を付箋や手帳で管理している。精神科の受付では、こうした場面が毎日のように起きています。今回の病院でも、最初に伺ったのはまさにこうした日々の流れでした。設問の中身も、担当の比率も、お電話の受付時間も病院ごとに違います。だからこそ、MENTRAでは作る前にいまの流れを伺い、これまでとこれからを整理するところから始めています。自院の受付の流れに合わせたい場合も、まずいまの流れを伺い、整理するところからご一緒します。進め方は導入の流れに、問診でできることはWeb問診のページにまとめています。

参考

  • 藤井千代「精神科診療所の機能に関する調査(速報値)」第6回 精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会 資料2(厚生労働省、2025年5月12日): PDF
  • 田中和彦「精神保健福祉士(PSW)が行う精神科予診のポイント―経験論的実践マニュアル―」『瀬木学園紀要』第5号(2011年): PDF
  • 福島県立ふくしま医療センターこころの杜「初めての受診希望の方」: ページ
  • 香川県立丸亀病院「精神科(心療内科・思春期心療内科)」: ページ
  • 群馬県立精神医療センター「地域医療連携室」: ページ

よくあるご質問

担当を順番に回すだけではいけないのですか

全員が同じ比率なら順番に回すのと同じ結果になります。比率が人によって違う場合や、お休みの方がいる場合は、順番だけでは比率から外れていきます。目標に最も足りない人を選ぶ方式は、比率が同じなら順番に回すのと同じ動きをし、比率が違っても目標どおりに配ります。

どの答えでお電話へご案内するかは、AIが決めているのですか

いいえ。病院が受診の前に確かめたい設問と、お電話へご案内する答えを病院の資料のまま画面にし、その組み合わせだけで行き先が決まります。誰が答えても同じ答えなら同じ行き先になり、なぜそうなったかを病院が説明できます。

担当の方がお休みの日はどうなりますか

名簿でお休みにした方には割り振られず、ほかの方で比率どおりに分け直されます。お休みの付け外しでは数え直しが起きないので、戻ったあとも比率が崩れません。

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