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医療記録の「見読性」とは何か ― 必要なときに読めるということ

目次
  1. 「読める」とは、画面に出ることだけを指すのか
  2. 記録が5種類あるとき、どこを探せばよいのか
  3. 変更の履歴も、読めなければ意味がない
  4. 見読性は、日々の操作の中にある

電子的な診療記録には、厚生労働省のガイドラインが3つの条件を求めています。真正性(誰がいつ書いたかが確かで、あとから書き換えられていないこと)、見読性(必要なときに読める状態であること)、保存性(定められた期間、失われずに保たれること)です。

このうち見読性は、いちばん地味に見えます。「読めるのは当たり前ではないか」と思われるからです。ところが精神科のように記録が5種類に分かれている現場では、この当たり前がいちばん崩れやすいところにあります。

「読める」とは、画面に出ることだけを指すのか

見読性が問うているのは、画面に文字が表示されるかどうかではありません。必要になった場面で、必要な人が、必要な記録に到達できるかです。

必要になる場面は、日常の診療だけではありません。

  • 別の医師が代診に入り、これまでの経過を確かめたいとき
  • 診断書や意見書を書くために、数年分の経過を遡るとき
  • 患者さんやご家族から開示を求められたとき
  • 監査や実地指導で、記録の提示を求められたとき

このどれもが「読めなかった」で済まされない場面です。保管されていることと、読めることは別だという前提が、見読性という条件の意味だと考えています。

読めることが要る場面 そのとき探すもの たどり着けなくする構造
代診の医師が、これまでの経過を確かめる 直近の診察・看護・面談の記録 様式ごとに置き場所が分かれている
診断書や意見書を書く 数年分の経過 期間で絞り込めず、1件ずつ開くしかない
患者さんやご家族から開示を求められる 指定された期間の記録一式 画面と紙で、同じ内容が違う形で出る
監査や実地指導で提示を求められる いつ誰が何を直したか 操作の記録が、機械の中にしかない

記録が5種類あるとき、どこを探せばよいのか

精神科では、ひとりの患者さんに対して複数の職種が記録を残します。診察の記録、看護記録、面談記録、多職種カンファレンスの議事録、福祉部門の訪問記録。書く人も様式も違います。

様式ごとに置き場所が分かれていると、探す側はまずどこを見ればよいかを判断するところから始めます。 これは見読性を損なう構造です。記録は存在するのに、たどり着けない時間が発生します。

MENTRAでは2026年5月に、記録をひとつのタブに集約しました。作るときは「記録の種別」を選ぶだけで、探すときは同じ場所を見ればよくなります。様式が増えても、探す場所は増えません。

これは操作の数を減らす話であると同時に、見読性の話でもあります。どこにあるか分からない記録は、読める状態にあるとは言えません。

変更の履歴も、読めなければ意味がない

真正性のために操作の記録を残していても、それが読める形になっていなければ、確かめたいときに確かめられません。監査ログが機械の中にあるだけでは、見読性を満たしたことにならないということです。

MENTRAでは、患者さんごとの変更履歴を画面から読める形にしています。

  • 追加・変更・削除が時系列で並ぶ
  • 操作した方・操作の種類・対象・期間で絞り込める
  • 一件を選ぶと、そのとき何がどう変わったのかを変更前と変更後の内容で確認できる
  • AIによる自動保存と、人が手で行った操作が区別して表示される

最後の一点は精神科の記録では特に効きます。下書きを作ったのが機械で、確定したのが人だからです。どこまでが機械の仕事で、どこからが人の判断だったのかが読めることが、記録を後から検証できる状態を作ります。

見読性は、日々の操作の中にある

見読性は、制度対応のために別途つくる機能ではありません。探しやすさ、表示のわかりやすさ、履歴のたどりやすさという、日常の使い勝手そのものです。

MENTRAの利用者は、ITに詳しい方ばかりではありません。だから記録の画面は、専門用語を並べず、記号を露出させず、必要な情報だけが目に入る形にしています。普段使いにくいものが、いざというときだけ読みやすいということは起こりません。

記録は消さずに残す方式に統一していて、看護記録のように書式が定まっているものはPDFとして取り出せます。院内で回覧するときも、外部に提示するときも、同じ内容が同じ形で出ます。

3つの条件のうち、真正性と保存性については別の記事で書きました(医療記録の「真正性」とは何か、精神科の記録に求められる「保存性」とは何か)。3つは別々の要件ですが、現場から見れば「必要なときに、確かな記録がちゃんと出てくる」というひとつのことです。

記録を預かる側として何をしているかはセキュリティの考え方にまとめています。監査や実地指導への備えとして何がどこまで見えるとよいかは施設ごとに違いますので、貴院で求められている水準をお聞かせいただければ、具体的にお答えできます。


参考(原典)

(本記事は2026年9月8日時点の情報にもとづいています)

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