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患者情報をChatGPTに貼ると何が起きるのか、精神科の現場で考える

目次
  1. 貼った患者情報は、どこへ行くのか
  2. 実際に、どんなことが起きてきたのか
  3. 法律と国のガイドラインは、何を求めているのか
  4. 精神科の記録は、名前を消しても本人に届く
  5. 禁止するだけでは、なぜ止まらないのか
  6. MENTRAは、病院ごとに何を一緒に進めるのか

「記録を整えるのに、患者さんの情報をChatGPTにそのまま貼っているが、それでいいのか」。精神科・心療内科の病院や訪問看護の事業所から、このご相談を多くいただきます。生成AIを業務に使う医療者は、もう珍しくありません。英国では一般開業医の5人に1人が診療に生成AIを使っていると報告され(BMJ Health & Care Informatics、2024年)、国内でも病院薬剤師の56.0%が業務で使っているという調査があります(医療薬学、2026年)。

便利だから使われる。だからこそ、患者情報を貼ったときに何が起きるのかを、先に知っておく必要があります。この記事では、精神科の現場の目線で、貼った情報の行き先、実際に起きた事例、法律と国のガイドラインが求めること、そして院内で安全に使う形までを順に整理します。

貼った患者情報は、どこへ行くのか

生成AIに文章を貼ると、その文章は職員の端末を離れ、AIを提供する会社のサーバーへ送られます。個人向けのサービスでは、そこから先の扱いが、利用者が設定を変えるかどうかで変わります。

職員の端末 記録をそのまま貼る 提供会社のサーバー 多くは国外で処理 学習に使われうる 人が読むことがある 長く保存される 外から見えるおそれ 不具合・乗っ取り・設定ミス 個人向けの 既定の扱い
貼った瞬間に、患者情報は院内の管理の外へ出る。その先の扱いは、サービスの設定と契約で決まる

主な個人向けサービスの扱いを、各社の公開情報から並べると次のとおりです(2026年10月時点)。

サービス(個人向け) 入力の扱い 止める方法・保存の期間
ChatGPT(無料・Plus・Pro) 既定でモデルの改善に使われうる 設定の「データコントロール」でオフにできる
Gemini アプリ 会話の一部を人のレビュアーが読むことがある レビューされた会話は最大3年保持。保存をオフにしても72時間は保持
Claude(Free・Pro・Max) 学習を許可すると新しい会話を学習に使う 許可した場合の保持は5年、許可しなければ30日

Googleは公式のヘルプで、レビュアーに見られたくない機密情報は入力しないよう呼びかけています。Anthropicも、個人向けの規約の変更を公式に発表しています。法人向けのプランでは学習に使わない扱いが既定のものが多い一方、職員が個人のアカウントで使っている限り、病院の側からはどの設定で使われているかを確かめられません。

実際に、どんなことが起きてきたのか

「提供会社は大手だから大丈夫」と考えたくなりますが、入力した情報が外から見えた、あるいは当局が利用を止めた事例は、すでにいくつも起きています。

2023年3月 不具合で他人の 会話の題が見えた 2023年3月 イタリア当局が 処理を一時制限 2023年5月 社外秘の入力で 大企業が利用を禁止 2023年6月 盗まれたログイン 情報10万件余り 2023年12月〜 支援職員の入力が判明 翌年9月に禁止命令 2025年1月 会話の記録が 外から見えていた
提供会社の不具合、利用者の入力、アカウントの盗難、設定ミス。漏れる道は1つではない
時期 何が起きたか 現場への示唆
2023年3月 ChatGPTの不具合で、一部の利用者に他人の会話履歴の題が見え、有料会員の約1.2%は支払い情報の一部が見えた可能性があると提供会社が公表 利用者に落ち度が無くても、入力は外に見えうる
2023年3月 イタリアの個人データ保護当局が、ChatGPTによる国内の個人データの処理を一時的に制限 学習に使う根拠や説明の不足は、規制当局が止める理由になる
2023年5月 社員が社内のソースコードをChatGPTにアップロードしたことを受け、Samsungが社内での生成AIの利用を禁止したと報道 一度送った情報は、取り出すことも消すことも難しい
2023年6月 情報を盗むマルウェアのログから、ChatGPTのログイン情報10万件余りが闇市場で見つかったと報告 アカウントが乗っ取られると、過去の会話ごと読まれる
2023年12月〜 豪州ビクトリア州で、児童保護の職員が裁判所に出す報告書をChatGPTで作り、子どもに関するとても機微な情報を入力していたことが判明(当局の調査)。2024年9月、当局は児童保護の職員による生成AIの利用を禁止し、遮断するよう命じたと報じられた 対人支援の現場の、善意の効率化が問題になった
2025年1月 DeepSeekのデータベースが認証なしで外から見え、平文の会話の記録が含まれていたと報告 提供会社の設定ミス1つで、会話がそのまま露出する

とくに豪州の事例は、医療・福祉の現場に近いものです。職員に悪意は無く、報告書を早く仕上げたかっただけでした。それでも当局は、機微な情報が省の管理の外にある事業者へ渡ったことを問題とし、職種全体での利用の禁止にまで至りました。精神科の記録を整えたいという気持ちから貼る場面と、構図はほとんど同じです。

法律と国のガイドラインは、何を求めているのか

医療機関が患者情報を生成AIに入れるとき、重なってかかる決まりが3つあります。

守秘義務 医師は刑法134条 看護職は保助看法42条の2 個人情報保護法 病歴は要配慮個人情報 国外への提供は28条 3省2ガイドライン 学習のため保存されない ことを契約で担保 患者情報を生成AIに入れる 3つを同時に満たす必要がある
1つを満たしても足りない。守秘義務・個人情報保護法・国のガイドラインが、同じ1回の入力に重なる

1つめは守秘義務です。医師は刑法134条、看護師・准看護師・保健師は保健師助産師看護師法42条の2で、業務上知った秘密を正当な理由なく漏らすことを禁じられ、どちらにも刑事罰があります。

2つめは個人情報保護法です。同法の第2条第3項は、病歴を「要配慮個人情報」として、とくに慎重な扱いが要る情報に定めています。国外の事業者へ渡すときは、第28条の規制も別にかかります。個人情報保護委員会は2023年6月の注意喚起で、本人の同意なく個人データを生成AIに入力し、それが応答以外の目的に使われると法律に違反するおそれがあるとして、提供会社が機械学習に使わないことなどを十分に確かめるよう求めました。

3つめは、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」第7.0版です。Q&A(企画管理編)のQ18は、生成AIに医療情報を入力する場面について、入力した情報が学習などのために保存されないことが契約などで担保されていれば、国内法の適用を受けないサーバーでも使ってよいと整理しています。裏を返せば、その担保が無いまま入力することは、この整理の外にあります。ガイドラインの全体像は3省2ガイドラインの解説に、外部のAIに送るときの法的な整理は患者情報を生成AIに入れてよいのかにまとめています。

精神科の記録は、名前を消しても本人に届く

「氏名を消してから貼れば大丈夫」という声もよく聞きます。ただ、精神科の記録は、名前を消しても本人に届きやすい性質を持っています。病名、年代、住んでいる地域、家族構成、入院や受診の時期。1つずつは誰のことか分からなくても、重ねると対象が一気に絞られます。

30代 ◯◯市に住む 双極性障害 母と二人暮らし 昨年3月に入院 重ねるほど 絞られる ほぼ一人に 名前が無くても届く
架空の例。どれも記録に普通に書かれる情報だが、重ねると本人に届く

精神科の記録には、病歴に加えて、家族との関係、自傷や希死念慮の有無、生活の困りごとといった、本人がとくに知られたくない内容が並びます。地方の事業所ほど、地域と家族構成だけで誰のことかが分かりやすくなります。どこまで消せば足りるかを職員が1件ずつ判断する形は、忙しい日ほど漏れが出ます。

禁止するだけでは、なぜ止まらないのか

危ないなら禁止すればよい、と考えるのは自然です。ただ、禁止を決めるだけでは、記録を書く手間はそのまま残ります。

禁止だけ 道具を用意 記録の手間は残る 早く仕上げたい 個人のスマホで使う 個人のアカウント 院内から見えない 設定も履歴も分からない 使ってよい道具 学習に使われない 記録の画面の中で 貼り付けが要らない 院内で管理できる 誰が何をしたか残る
禁止は入口でしかない。代わりの道具とセットにして初めて、現場の使い方が院内に戻ってくる

早く仕上げたいという気持ちが残る限り、職員は個人のスマホや個人のアカウントで使い続けるかもしれません。そうなると、どのサービスを、どの設定で、何に使っているかが、院内から見えなくなります。禁止を決めたあとのほうが、かえって実態が分からなくなるおそれがあります。だからこそ、使ってよい道具を院内で用意し、そちらへ寄せる形が近道です。実際に、患者情報を外部の一般公開型の生成AIに入力しないよう定めたうえで、安全な環境での活用に寄せる方針を院内に通知した大学病院もあります(名古屋大学医学部・附属病院の方針通知)。院内で確かめておきたいことは次のとおりです。

確かめること 見るところ
学習に使われないか 契約・利用規約に、入力を学習や改善に使わないことが書かれているか
どこで処理・保存されるか 処理と保存の場所、保存の期間、国外で処理される場合の扱い
誰が使っているか 個人ではなく院内のアカウントで使い、退職時に止められるか
何が残るか 誰が・いつ・何に使ったかを、あとから院内で辿れるか
院内の決まり 使ってよい道具と送ってよい情報を、利用規程に書いて職員に伝えているか

MENTRAは、病院ごとに何を一緒に進めるのか

MENTRAは、精神科・心療内科に特化した医療AIです。私たちは、記録を整えるためにAIを使う場面を、記録の画面の中で完結させる形で作っています。2026年10月には、訪問看護の看護記録で、AIの下書きを「短く」「詳しく」などのボタンや言葉の指示で直せるようにしました(プロダクトアップデート)。使うのは、送った内容がAIの学習に使われないことを確かめた外部のAIサービスだけで、記録は医療機関ごとに分けて管理し、AIに何を頼み、どの案に置き換えたかも残ります。データの扱いはセキュリティでご説明しています。

ただ、病院ごとに、記録の悩みも、AIを使いたい場所も違います。そこで私たちは、ヒアリングから定着まで、病院ごとに伴走します。

ヒアリング 記録の悩みを伺う 使う場所の整理 どの記録に効くか 合うAIの選定 安全と使い勝手 導入 院内の形に合わせる 定着 現場で回るまで MENTRAが、病院ごとに最初から最後までご一緒します
製品を決める前の、悩みの整理から伴走する。院内の決まりづくりも一緒に進める

どの記録に時間がかかっているか、どの職種がどんな場面でAIを使いたいかを伺い、使う場所を一緒に整理します。そのうえで、安全の条件と使い勝手の両方から合うAIを選び、院内の記録の形や利用規程に合わせて組み込みます。看護記録に限らず、診察、面談、議事録などの記録でも、病院ごとの形に合わせて組み込めます。入れて終わりにせず、現場で回るようになるまでご一緒します。進め方は院内のDX支援でご紹介しています。MENTRAの導入有無は問いません。

「職員が個人のスマホでAIを使っているかもしれない」「院内の利用規程をどう書けばよいか分からない」「記録にAIを使いたいが、どこから手をつければよいか分からない」。こうした段階からで構いません。患者さんの情報を守りながらAIで記録を楽にしたいときは、お問い合わせからご相談ください。

よくあるご質問

名前を消してから貼れば、入れてもよいですか

名前を消すだけでは足りないことが多いです。精神科の記録には、病名・年代・住んでいる地域・家族構成・入院の時期などが並びます。1つずつは誰のことか分からなくても、組み合わさると本人に届きます。どの項目を消せば足りるかを職員が毎回判断する形は、続けるほど漏れが出ます。送ってよい項目を院内で先に決め、学習に使われないことを確かめた道具で使うほうが確実です。

病院としては、ChatGPTを禁止すべきですか

禁止を決めること自体は大切ですが、それだけでは記録の手間が残り、個人のスマホや個人のアカウントで使われると院内から見えなくなります。使ってよい道具と使い方を決め、学習に使われない環境を用意して、そちらへ寄せる形をおすすめします。禁止と代わりの道具はセットで考えると、現場で回ります。

有料版や法人向けのプランにすれば安全ですか

法人向けのプランでは、入力を学習に使わない扱いが既定になっているものが多く、個人向けより安全に近づきます。ただ、学習の扱いのほかにも、どこで処理・保存されるか、誰がどのアカウントで使うか、記録として何が残るかを確かめる必要があります。国のガイドラインのQ&Aも、学習のために保存されないことが契約などで担保されていることを、使ってよい条件の1つとしています。プランの名前ではなく、確かめた中身で判断するのが近道です。

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まずは、30分だけ話を聞かせてください。

今の記録の流れを伺うところからで大丈夫です。資料の準備は不要です。

精神科病院からメンタルクリニックまで、規模を問わず。院内の運用に合わせた調整もご相談ください。