テックブログ
精神科の栄養指導記録に何を書くか ― 様式と3つの穴
目次
栄養指導記録とは、管理栄養士が行った栄養食事指導の内容を残す記録です。指導した内容の要点と、指導にかけた時間の2つが、記録に残っているかどうかを外から確認される項目になっています。
この記事では、実在の様式に並んでいる欄を一つずつ見たうえで、精神科で書くときに起きる3つの問題を整理します。
栄養指導記録は、どこで必要になるのか
栄養食事指導は、医師の指示にもとづいて管理栄養士が行い、その内容を記録に残すところまでが一続きです。
厚生労働省が公開している保険診療確認事項リスト(医科)には、外来栄養食事指導料・入院栄養食事指導料のそれぞれについて、次のような項目が指摘事項として並んでいます。
| 指摘事項として挙げられているもの |
|---|
| 栄養指導記録を作成していない |
| 指導内容の要点について栄養指導記録への記載がない、または個々の患者の状態に応じた適切な記載がない |
| 指導時間について栄養指導記録への記載がない、または不適切である |
つまり、「指導した」ことと「記録が残っている」ことが別々に見られるという構造です。指導そのものは行われていても、要点と時間が記録の上に無ければ、そこが指摘の対象になります。
様式に並んでいる欄
新潟県が公開している栄養指導記録の様式(様式№5)は、運用ルートまで含めて定められた実例です。並んでいる欄は次のとおりです。
| 欄 | 何を書くか |
|---|---|
| 日付・時刻 | 開始時刻と終了時刻。3回分を横に並べて経過を追う形 |
| 現状・問題点 | 指導の出発点。いまどうなっているか |
| 食事記録 | 指示エネルギーと、摂取エネルギー(1日目・2日目) |
| 指導事項 | 実際に伝えた内容 |
| 本人の目標 | ご本人の言葉で決めた目標 |
| 次回以降の指導の要否 | 要・否と、その理由 |
| 今後の支援内容 | 次につなぐこと |
| 担当者名 | 誰が指導したか |
運用ルートは「登録管理栄養士(→看護師)→主治医」と書かれています。栄養指導記録は管理栄養士が書いて終わるものではなく、主治医まで戻る前提で作られているということです。
注目したいのは、「次回以降の指導の要否」に理由の欄が付いていることです。要か否かだけなら丸を付ければ済みますが、理由を書く欄があるのは、次に読む人が判断のもとを追えるようにするためです。
栄養ケアプロセスとの対応
日本栄養士会は、事例報告の様式として栄養ケアプロセス(NCP)にもとづく形を公開しています。並びは4つです。
栄養診断は、NI-1.3 エネルギー摂取量過剰 のようにコードと名称で書き、その根拠を PES(Problem/Etiology/Signs・Symptoms)の形で残します。栄養介入は Mx(モニタリング計画)・Rx(栄養治療計画)・Ex(栄養教育計画)の3つに分けます。
自施設の様式がこの並びでなくても、対応づけて考えることはできます。先ほどの様式でいえば「現状・問題点」がアセスメント、「指導事項」と「本人の目標」が介入、「次回以降の指導の要否」がモニタリングの入口にあたります。
記録に残すときの3つの穴
ここからが本題です。欄を埋めること自体は難しくありませんが、あとから読み返したときに使えない記録になりやすい箇所が3つあります。
1. 数字だけが残り、根拠が残らない
摂取エネルギーの数字は欄があるので必ず埋まりますが、その数字をどうやって把握したかは欄がありません。ご本人の申告なのか、病棟の食事摂取量からなのか、ご家族からの情報なのかで、数字の重みはまったく違います。次に読む人が同じ数字を見て違う判断をしてしまいます。
数字の横に、出どころを示す短い一文を添えるだけで解決します。
2. 前回の記録に引っ張られる
3回分を横に並べる様式は経過を追いやすい反面、前回の記入が目に入った状態で今回を書くことになります。前回「間食が多い」と書いてあると、今回も同じ方向で見てしまいます。
先に今回の観察を書き、比べるのは書いたあとにする。順番を変えるだけで違います。
3. 指導事項と、ご本人の言葉が混ざる
「指導事項」と「本人の目標」は欄が分かれていますが、実際に書くときは一続きの会話から切り出すので混ざりやすい箇所です。こちらが伝えたこととご本人が決めたことが区別できないと、次回に目標を振り返れません。
精神科で、さらに難しくなること
精神科では、食行動が服薬の影響や生活リズムと結びついている場面が多くあります。体重の増減が食事の内容だけでは説明のつかないことがあり、そのとき指導事項だけを書くと、なぜその方針になったのかが次に読む人に伝わりません。
判断のもとになった生活面の観察を、短い根拠の行として同じ場所に残しておく。これが、経過を追える記録と追えない記録の分かれ目になります。
MENTRAでは
MENTRAは、面談の場で録音した会話から記録の下書きを作ります。管理栄養士・栄養士の方がご自身で記録を作成・編集できる「コメディカル」の権限を2026年9月に追加しました。
上の3つの穴のうち、1と3は会話がそのまま残っていれば防げるものです。誰が何を言ったかが文字で残っていれば、数字の出どころも、ご本人の言葉も、書き写す段階で失われません。医療者の方が内容を確認して確定するところまでが1つの流れになっています。
記録の形は施設ごとに違います。お使いの様式に合わせられるかどうかは個別にご相談させてください。面談記録の機能に、いまの形をまとめています。
参考
- 厚生労働省 保険局医療課医療指導監査室「保険診療確認事項リスト(医科)令和6年度改定版」
- 新潟県「栄養指導記録(様式№5)」
- 公益社団法人 日本栄養士会「「栄養の指導」に関する事例・症例報告(栄養ケアプロセス)事例報告様式」
よくあるご質問
栄養指導記録は、診療録とは別に作るものですか
施設によって運用が分かれます。診療録に直接書く形と、栄養指導記録という別の様式を作って主治医へ戻す形の両方があります。新潟県が公開している様式では、運用ルートが「登録管理栄養士(→看護師)→主治医」と定められています。どちらの形でも、指導内容の要点と指導時間がどこかに残っていることが求められる点は同じです。
指導時間は、なぜ記録に残す必要があるのですか
外来栄養食事指導料は指導時間の長さが算定の条件に含まれるためです。厚生労働省の保険診療確認事項リスト(医科)には、指導時間について栄養指導記録への記載がない、または不適切である、という項目が指摘事項として挙げられています。開始と終了の時刻を欄として持っている様式が多いのは、このためです。
栄養ケアプロセス(NCP)は必ず使わなければいけませんか
算定の要件として名指しされているものではありません。ただ、日本栄養士会が事例報告の様式として採用しており、栄養アセスメント・栄養診断・栄養介入・モニタリングという共通の並びで書けるため、施設をまたいで読める記録になります。自施設の様式がある場合は、その欄をこの並びに対応づけて考えると整理しやすくなります。
精神科の栄養指導で、ほかの科と違う点はありますか
食行動が服薬の影響や生活リズムと結びついている場面が多い点です。体重の増減が食事の内容だけでは説明がつかないこともあるため、指導事項だけを書くと、次に読む人がなぜその方針になったのかを追えません。判断のもとになった生活面の観察を、短い根拠の行として同じ場所に残しておくと経過を追えます。
