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精神科病院の業務効率化は、どこから手を付けるのか
目次
「業務効率化」で調べると、出てくるのは人員配置、シフト、経営指標の話がほとんどです。どれも大事ですが、精神科の現場で日々いちばん時間を食っているのは、たいてい記録です。
そして記録は、人を増やしても、シフトを組み替えても減りません。作業そのものの形を変えないかぎり、同じ量が毎日出てきます。
まず、どこに時間が溶けているかを数える
効率化でいちばん多い失敗は、いちばん目立つ作業から手を付けてしまうことです。目立つ作業と、時間を食っている作業は別です。
数えるのは1週間ぶんで足ります。ストップウォッチも要りません。
| 数えるもの | 何を書き出すか |
|---|---|
| 作業の名前 | 「診察の記録」「看護記録」「面談記録」「カンファレンスの議事録」「訪問の記録」「診断書・意見書」など |
| 1回あたりの時間 | 感覚で構いません。5分単位で十分 |
| 1日の件数 | 職種ごとに、1人あたり何回発生するか |
| かける人数 | その作業をする職員が何人いるか |
「1回あたり」が短くても、件数と人数を掛けると順位が変わります。 5分×20件×3人は、30分×1件×1人の10倍です。現場で「大変だ」と言われるのは前者ではなく後者のことが多いので、ここは感覚ではなく掛け算で決めます。
打ち手を、3つに分ける
出てきた作業を、次の3つに仕分けます。上から順に検討するのが原則です。
| 順 | 打ち手 | 問い | 例 |
|---|---|---|---|
| 1 | なくす | その作業は、そもそも要るか | 同じ情報を2つの帳票に書いている/誰も読んでいない集計 |
| 2 | 減らす | 回数や項目を減らせないか | 毎回の入力を初回だけにする/選択肢を絞る |
| 3 | 機械に渡す | 人でなくてもできるか | 会話から記録の下書きを作る/集計を自動にする |
3番目から入ると、「要らない作業を、速くやる」ことになります。 効率化の相談で最初に確かめるのはここです。
一方で、精神科の記録の多くは1と2で消えません。書くこと自体が診療の一部だからです。だから3が主戦場になります。
記録で時間を食っているのは「書く」より「思い出す」
記録の負担は、文字を打つ時間だけではありません。診察や訪問が終わってから、記憶をたどって組み立て直す時間が乗ります。
- 診察から時間が空くほど、思い出すのに時間がかかる
- 思い出せないと、記録が薄くなる
- 薄い記録が続くと、次に読む人がまた聞き直すことになる
だから効くのは「速く打てるようにする」ことではなく、思い出す工程そのものを外すことです。
MENTRAでは、診察や訪問の会話から記録の下書きを作ります。導入医療機関の実測では、診察終了から下書きの完成まで中央値16秒(9割は45秒以内)。訪問看護では、23.5分の会話が約47秒で記録になっています。会話が長いほど楽になる方向に効くのが、この作りの特徴です。
一度に全部を変えない
効率化が止まるいちばんの理由は、変える範囲を広げすぎることです。全部門・全職種で一斉に切り替えると、誰も慣れないまま元の手順に戻ります。
導入医療機関では、医師2名から18名へ、7か月かけて広がりました。月あたりの利用は月9件 → 606件です。順番は、診察の記録 → 看護記録 → 面談・カンファレンス・福祉訪問、と記録の様式ごとに増えています。
広がったかどうかを見る数字も決めておくと、判断が早くなります。導入医療機関では、AIが作った下書きの96.6%が医療者の手元で確定まで進んでいます。作っただけで放置される下書きではなく、日々の記録として使われていることがこの数字で分かります。
効果を、あとから説明できる形にしておく
最後に、着手する前の数字を残しておくことをおすすめします。
- どの作業に、1週間で何時間かかっていたか
- 記録が仕上がるまで、平均どのくらい空いていたか
- 記録を書く職員が何人いたか
始めてしまうと、始める前の状態は思い出せません。 効率化の効果を院内で説明するとき、この3つがあるかどうかで話の通り方が変わります。
どこから始めるかは、現場を見ないと決まらない
ここまでの順番は一般的な整理で、実際にどこから手を付けるかは院内の運用によって変わります。 同じ精神科病院でも、病棟中心か外来中心か、訪問看護を持っているか、福祉部門があるかで、時間の溶けている場所が違います。
MENTRAでは、記録のAIを入れるかどうかとは別に、院内のお困りごとを一緒に整理するところからご一緒しています(医療機関のDX支援)。「この作業、もっと楽にならないだろうか」という段階でも構いません。まず30分、いまの記録の流れを聞かせていただくところから始められます(導入の流れ)。
