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Y-BOCSとは何か ― 強迫症状を10項目・0〜40点で残す

目次
  1. Y-BOCSは、どこで使われるのか
  2. 10項目の構成 ― 5つの観点が対になる
  3. 合計点の帯 ― 目安として使う
  4. 付け方の原則 ― 症状チェックリストが先
  5. 記録に残すとき、何が起きるか
  6. MENTRAでは、尺度をどう記録に置いているか

Y-BOCS(Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale/エール・ブラウン強迫観念・強迫行為尺度)とは、強迫症の症状の重さを、強迫観念5項目と強迫行為5項目の計10項目でそれぞれ0〜4点で付ける、治療者が面接で評価する尺度です。1989年にGoodmanらが発表し、強迫症の臨床試験と経過の記録で標準的に使われています。

Y-BOCSの特徴は、同じ5つの観点が観念と行為で対になっていることと、評価の前に症状チェックリストで何の症状について付けるのかを特定することの2つです。この記事では、構成と帯の目安、付け方の原則、そして点数を記録に残すときに起きる問題を整理します。

Y-BOCSは、どこで使われるのか

Y-BOCSは診療報酬の算定要件に名指しで出てくる尺度ではありません。使われる場面は主に3つです。

  • 強迫症の経過の記録 — 治療開始時と、薬物療法や曝露反応妨害法の前後で症状の重さを残すとき
  • 臨床試験 — 強迫症を対象にした試験で、主要な指標として使われます
  • 観念と行為の比重を見るとき — 合計点だけでなく、観念の5項目と行為の5項目の合計を分けて、どちらが重いかを見るとき

10項目の構成 ― 5つの観点が対になる

Y-BOCSの10項目は、時間・妨げ・苦痛・抵抗・制御の5つの観点を、強迫観念と強迫行為のそれぞれについて尋ねる構成です。

観点 強迫観念(項目1〜5) 強迫行為(項目6〜10)
時間 観念に費やす時間 行為に費やす時間
妨げ 観念による生活の妨げ 行為による生活の妨げ
苦痛 観念による苦痛 行為による苦痛
抵抗 観念への抵抗 行為への抵抗
制御 観念の制御の程度 行為の制御の程度

各項目は0〜4点の5段階で、合計点の範囲は0〜40点です。観念の合計(0〜20)と行為の合計(0〜20)を分けて出せるので、「観念は重いが行為は少ない」というような比重が読めます。

「抵抗」の項目は、他の4つと向きが違うことに注意が要ります。症状に抵抗しようとしているほど点数は低く、抵抗をあきらめて完全に従っているほど点数は高くなります。治療が進んで症状に立ち向かえるようになると、この項目は下がります。

合計点の帯 ― 目安として使う

合計点 目安
0〜7 症状の範囲とは言いにくい
8〜15 軽度
16〜23 中等度
24〜31 重度
32〜40 極度

臨床試験では16点以上を参加の目安に置くものが多く、治療によって合計点が一定の割合(25%あるいは35%)以上下がったことを反応の目安にします。どの区切りを使ったかは、記録に残しておきます。

付け方の原則 ― 症状チェックリストが先

Y-BOCSの評価は、症状チェックリストから始めます。汚染・確認・対称性・ため込みなど、どんな強迫観念と強迫行為があるかを一覧から特定し、そのうえで主要な症状について10項目を付けます。

ここが実務で抜けやすいところです。「Y-BOCS 24」という点数だけが残っていて、何の症状についての24なのかが分からない、という記録は実際にあります。チェックリストで特定した症状は、点数と一緒に残す必要があります。

評価期間は原則として過去1週間です。治療者が半構造化面接で付けるのが標準で、患者さんと一緒に実施することが推奨されています。自己記入式の版もありますが、面接で付ける版とは点数の意味が少し違うので、どちらで付けたかを記録に残します。

記録に残すとき、何が起きるか

何の症状についての点数かが残らない。 上に書いたとおり、Y-BOCSは症状チェックリストで特定した症状について付けます。点数だけを残すと、次に読む人は何の症状が重いのか分かりません。

観念と行為の内訳が残らない。 合計24点でも、観念14・行為10と、観念8・行為16は違う状態です。治療の焦点も変わります。合計だけでなく2つの小計を残します。

前回の点数に引っ張られる。 強迫症状は治療で動きます。前回の評価表を見ながら付けると、動いたはずの項目が動かなくなります。付けるときは前回を見ず、付け終わってから比べる順番が要ります。

MENTRAでは、尺度をどう記録に置いているか

MENTRAの看護記録では、GAFの入力欄を記録を書く流れの中に置き、その日の会話から作った目安の値と、看護師の方が確定した値、根拠の1行を同じ画面に残しています(看護記録にGAF尺度を追加しました)。別の紙に転記する作業を作らず、数字と根拠が同じ場所に並ぶようにするためです。

Y-BOCSのように「何についての点数か」が要る尺度では、症状チェックリストの結果と10項目の点数、2つの小計を同じ記録の中に構造化して残しておくと、あとから数え直さずに経過を出せます。貴院で使っている尺度や様式に合わせて記録の欄を組めるかは、個別に検討してご提案しています。AIカルテ・診療記録の仕組みとあわせて、お気軽にご相談ください。


参考

  • OCDサポート「2-4-2. 強迫症の重症度」(10項目の構成・0〜40点・帯の目安・治療者による半構造化面接。公認心理師の執筆)
  • 一般社団法人 日本精神科評価尺度研究会「精神科領域の症状評価尺度 正式略称一覧」(Y-BOCS = Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale)
  • Goodman WK, Price LH, Rasmussen SA, et al. The Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale. I. Development, use, and reliability. Archives of General Psychiatry 1989; 46(11): 1006-1011(原著)

よくあるご質問

Y-BOCSは患者さんが自分で付けるものですか

原則は治療者が半構造化面接で付ける尺度です。自己記入式の版も作られていますが、面接で付ける版が標準で、治療者と一緒に実施することが推奨されています。

合計点が何点なら治療の対象ですか

帯の目安として16点以上を中等度以上と読むことが多く、臨床試験でも16点以上を参加の目安に置くものがあります。ただし点数は面接の材料であって、それだけで何かを決める数字ではありません。

症状チェックリストとは何ですか

Y-BOCSの評価に先立って、どんな強迫観念・強迫行為があるかを一覧から特定するリストです。何の症状について10項目を付けたのかが分からないと点数の意味が伝わらないので、チェックリストで特定した症状を記録に残します。

子どもにも使えますか

児童向けにはCY-BOCS(Children's Y-BOCS)があり、本人と保護者の両方から情報を得て付ける構成になっています。成人版をそのまま使うのではなく、児童版を使います。

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